「会社売却」と「事業承継」どっちがいいの?それぞれのおすすめポイント

目次

事業譲渡とも違う?「会社売却」と「事業承継」はどっちがいい?

会社や事業を誰かに受け継ぎたい、となった時、考えられる方法はいくつかありますが、その中で代表的なのが「会社売却」と「事業承継」ですよね。

しかし、事業承継に関しては「事業譲渡」というものもあるけれど、一体どう違うの?と疑問に思う方もいるでしょう。

分かりやすく言えば、会社売却は「経営者や株主が直接会社を譲渡(売却)する」こと。そして事業承継は「親族や従業員、あるいは雇い入れた人物に事業を引き継ぐ」ことです。

会社売却(株式譲渡)

会社売却は株式会社の場合「株式譲渡」とも呼ばれ、有体に言えば「会社の経営権を他者(第三者)に譲る」ということになります。株式会社の場合は「主要な株主が株式を売却することで経営権を譲渡する」形ですね。

会社売却のメリットは、何と言っても他の株主に賛成か反対かを判断してもらう特別決議をはじめとした面倒な手続きなしに譲渡が完了するところで、税率も20%程度と低く、経営者が利益を得やすい売却方法だと言われています。

メリット 税率が低くて手続きが比較的簡単、かつ利益を得やすい
デメリット 株主が複数いる場合は、経営者が強行しにくい

事業承継

事業承継は、特定の事業や会社の経営について「親族や従業員、あるいは新たに取引する人物へ受け継ぐ」こと。事業譲渡と名前が似通っているため混同されがちですが、実は全く別物です。

事業譲渡は「会社の一部(事業)を切り離して他社に譲渡する」ことで、経営権を渡さずに利益を得たり組織の再編をしたりが可能なのがメリット。買い手側にとっても負債を背負わず欲しい部分だけもらえるので、双方が納得しやすい取引と言えます。

しかし、事業承継の場合は「元々の会社の特徴や経営理念、気風などをそのまま引き継ぐ」ことになるため、承継される相手もそのビジョンに共感し、納得していなければ難しいという側面があるのです。

メリット 経営者の理念やビジョンに共感してくれる、信頼できる相手へ事業をそのまま受け継ぐことができる
デメリット 相手を見つけるのが難しい、後継者への教育に手間取りがち

では、これらを踏まえ「会社売却と事業承継、それぞれ向いている会社」を見てみましょう。

後継者にこだわらない!「会社売却」が向いている企業

まず、会社の経営権を丸ごと第三者へ譲渡する「会社売却」が向いている企業にはどのような特徴があるのかを見てみましょう。

  1. 後継者がおらず、引き継ぎの形にもこだわらない
    会社内、もしくは外部に後継者として考えている人材がおらず、かつ「必ずしも今の会社のまま続けて欲しい」というこだわりがない場合は、会社売却の方が向いているかもしれません。第三者を新たに見つけて事業承継をするのも不可能ではありませんが、やはりピンと来る相手がいない状況では上手くいかないことが多いのです。

  2. 無形資産やブランド力などがあり、まとまった利益が出る見込みがある
    会社売却で利益を得るためのポイントは「会社の価値が高いかどうか」。現在問題なく経営できているというだけでも十分ではありますが、他にはない歴史やそれに基づくノウハウ、特許などのブランド力がある場合には、特に売却額が高くなる傾向にあります。

  3. 売却後、経営者がすぐに現役を退きたい
    事業承継を行う場合には、ある程度手続きが済んでからも後継者の育成のために時間をかけなければならないことが多いため、経営者がすぐに引退するというわけにはいかないかもしれません。その点、会社売却であれば第三者に譲渡する形になるので、手続き後早めに現役を退くことも可能です。経営のストレスから引退を望む方にはおすすめと言えるでしょう。

  4. 経営者の資産を出来る限り守りたい
    多くの中小企業では、経営者の個人的な資産が借入金の担保にされているパターンも珍しくありません。しかし、第三者へ売却した後は債務に関しても譲り渡せますし、個人資産や保証に関しては担保から外れるのが一般的なので、経営者の資産を出来る限り守りたい方にもおすすめです。ただし、負債額が高すぎると売却額が大幅ダウンすることも。

後継者がいるならこっち!「事業承継」が向いている企業

次に、会社や事業を後継者に引き継ぐ「事業承継」が向いている企業についてです。次のような条件が揃えば、基本的には事業承継向きと言えるでしょう。

  1. 今後も形を変えずに引き継ぎたい事業がある
    会社売却の場合、経営権を受け渡す以上はどうしてもやり方や形などが変わってゆく恐れがあります。しかし、事業承継の場合は後継者が現在の経営者の意志を受け継いで運営されるのが一般的なので、現状問題なく経営ができており、かつ今後もそのまま続けたい事業があるのであれば事業承継が相応しいと言えるでしょう。

  2. 親族や従業員などに後継者がいる
    親族や幹部となる従業員、あるいは新たに見つけてきた取引先など、後継者として事業を受け継ぎたい相手が既にいる場合は事業承継一択です。信頼を置いている相手に会社を運営してもらえる、というのが事業承継の最たるメリットなので、出来るだけ早く育成を始めるのが良いでしょう。

  3. 親族や近しい人物同士で経営されており、第三者を交えると反発が出る恐れがある
    規模によってはありがちな問題として「代々親族や近しい距離の人同士で経営を行ってきたため、いきなり第三者に譲渡するとなると反発が起こる確率が高い」というもの。また、後継者が身内間で2人以上いる場合も争いやすいので、早めに後継者を決めて事業承継を計画するのがおすすめです。

  4. オーナーとしての地位を守りたい
    会社売却の場合、基本的には第三者に権利までを明け渡すため、経営者がそのままオーナーとして続投するのは難しいと言えます。しかし、事業承継の場合は現役を退いても「オーナー一族」としての地位が不動になる可能性があるので、代々受け継いできた事業で、家督を守りたい場合はこちらの方が良いでしょう。

M&Aの仲介サービスを利用すれば、全国的に取引先を探せることも!

しかし、中には「後継者は決まっていないものの、会社売却や事業譲渡はどうしてもできない!」という方もいるでしょう。その場合には、M&Aの仲介サービスを利用して承継先を見つける方法もあります。

M&A仲介サービスは双方の目的を踏まえて企業同士をマッチングしてくれる上、独自の情報網で全国的に候補を探せるため、身近を当たるよりも最適な人物が見つかりやすい、より利益が得られる相手と出会いやすいなどたくさんのメリットが!

会社売却、事業承継におけるM&A仲介サービスの利点

  • より高い金額で自社を求めてくれる企業に出会いやすい
  • 承継を行う場合、思わぬ業界で信頼できるパートナーと出会えることも
  • 自社の企業価値を客観的に確認できる
  • 売り手側企業はほぼ費用がかからない
  • 後継者がいる場合でも、適切なアドバイスが受けられる

また、上記の通り同業界のみならずあえて自社の業界に参入したい他業界の会社や、同業ではないものの上手く目的がかみ合う会社と出会え、問題なく事業承継を行えたという例も。

後継者がいる場合でも、専門家から事業承継に関する適切なアドバイスを受けられることが多いので、少しでも不安がある方はぜひ一度相談してみてはいかがでしょうか?

なぜ今売る?会社を売却する理由や方法を徹底解説

会社を売却する理由としては、通常であれば経営が上手くいかなかったり、大量の負債を抱えて困っていたり……というのが考えられますよね。しかし、昨今では戦略の一種、もしくは先々のことを考慮して会社を売却する中小企業が増えています。

しかし、一体なぜ売らなければならないのでしょうか?まずは代表的な理由から見て行きましょう。

業績不振だけじゃない!会社を売却する代表的な理由

会社を売却する理由は、昨今ではネガティブなものばかりではありません。むしろ自社の将来的な不安を解消するために行われる、ポジティブなものも多いのです。

後継者不足

まず、理由として多いのが「後継者不足」。

中小企業、特に創業者がそのまま代表を務めている会社の場合、世襲制にしようにも子どもが別の道を歩んでしまった、経営者に向いていそうな従業員もいない、という状況だと、市場価値の高い事業を保有していても将来性が見込めなくなってしまいます。

しかし、会社売却によって他社に事業を譲れば、倒産することなく従業員も任せることができるので、創業者にとっては安心です。もちろん対価も受け取れますから、それを老後資金に現役を退く創業者も多いよう。

売却し、利益を得て新規事業に活かしたい

現在の事業は上手くいっているけれど、正直自分ではこれ以上大きくできる気がしない、もしくは他にやりたいことができてしまった、という理由で会社を売却する経営者もいます。

特に欧米では事業が高収益を上げられるようになったらむしろ売り時で、もっと新たな可能性を秘めた新規事業にチャレンジしたい、と考える人も多いとのこと。最も市場価値が高いうちに売却するため、この場合は対価もかなり期待できそうですね。

自社の発展を目指して

後継者や業績的には問題ないけれど、今後の従業員のためにももっと会社を大きくしたいと考えている場合。つまり、他社と協力して現在の事業を更に発展させたいというのが理由で会社を売却するパターンもあります。

会社を発展させるためにはたくさんの資金や手間が必要ですが、自社だけでは限界があるため、他社の傘下に入ったり合併したりして経営資源を増やすということですね。この場合は焦りが少ないので、買い手企業を吟味しやすいというメリットがあります。

自社では伸び悩んでいる事業を任せ、中心的な事業に集中したい

例えば店舗とネット販売の両立など、ひとつだけでなく様々な事業を手掛ける企業も多いですよね。しかし、時には「この事業は業績的にも問題ないし将来性もあるけれど、この事業は正直これ以上の伸びしろはないだろう」となってしまうことも。

そこで、中心的な利益を上げている事業に注力するため、会社丸ごとではなく今ひとつ利益を上げられていない、もしくは赤字になってしまっている事業(不採算事業)を切り離して他社に売却する、という方法を取る経営者も増えています。

事業譲渡(売却)については後述しますが、会社をそのまま売却するよりメリットも大きく、特に個人事業主の間ではよく使われる手法です。

経営悪化が悪化したため、他社の傘下に入りたい

これは非常にシンプルな理由です。現在会社が上手くいっておらず、他社の傘下に入ることで何とか倒産を免れたい、というものですね。

そのまま会社が継続されなくとも、売却すれば対価は受け取ることができますから、上手くいけば負債を返済できる可能性もあります。ただし、そこまで業績が悪化した会社は市場価値が下がっているので、買い手を見つけるのは難しいようです。

会社を売却する主な手段は「M&A」

会社を売却する方法として一般的なのが「M&A」。これはMergers(マージャーズ)&Acquisitions(アクイジションズ)の略で、日本語訳をすると「合併と買収」という意味になります。

まず、M&Aは大まかに「友好的買収」か「敵対的買収」かで区別されるのが一般的です。

前者の友好的買収は、売り手企業の資産や事業などに魅力を感じた買い手企業と、会社を売却したい売り手企業の間で、双方が納得できる条件のもと合意の上で行われる買収のこと。優秀な従業員の流出を防げるほか、M&A後の組織合併も上手くいきやすいので、日本ではほとんどこちらの方法が選ばれているようです。

逆に敵対的買収は、簡単に言えば「売り手企業の経営陣が納得しないまま行われる買収のこと」を指します。特に上場企業だと株式の半分以上を保有することで大幅な権限を取得できますし、自社の経営陣や売り手企業側の株主の合意を得るだけで買収が可能ですから、一方的に支配される恐れもあるのですね。

しかし、この場合その後売り手企業側の協力が期待できないため、組織同士が上手くいかないことが多いよう。日本ではあまり見られないやり方ですが、念のため覚えておくと良いでしょう。

また、方法としてもM&Aには様々なものがあるため、検討する際には注意が必要です。では、一体どのような種類が存在するのでしょうか?代表的なものを見てみましょう。

株式譲渡

株式譲渡は、売り手企業が買い手企業に自社の株式を全て譲渡することで、経営権を受け渡す方法。比較的手続きが少なくて済むので、会社売却の方法としては最も定番だとも言われています。

お互いのメリットとしては、売り手企業は対価として買い手企業から現金を受け取れるというもの、買い手企業としては事業拡大のコストが削減できるというものが挙げられるでしょう。ただし、買い手企業は会社を丸ごと引き受けることになりますから、M&A後に簿外債務(帳簿外の負債)が発覚するリスクも。

合併

合併は、2社以上の組織がひとつになることを言います。買収だと売り手企業の法人格が失われないのに対し、合併は売り手企業の法人格が消滅するのが特徴です。大きく分けて「新設合併」と「吸収合併」が存在し、それぞれに以下のような特徴があります。

  • 新設合併
    新設合併は、合併する企業全てがいったん解散(消滅)し、新たに会社を立ち上げてそこに事業や従業員などを移転させるというもの。会社同士の立場が平等になりやすく、従業員同士のわだかまりも起きにくいのがメリットです。ただし、負債が受け継がれないかわりに資産(免許や許認可含む)も残せない上、上場廃止になったり現金を対価として受け取れなかったりというデメリットもあります。

  • 吸収合併
    ほとんどの会社が選択すると言われているのが、こちらの吸収合併。買い手となる企業の法人格のみを残し、売り手企業を吸収してひとつになるという方法です。従業員やノウハウだけでなく資産や免許も受け継げますし、上場廃止も免れる上に現金で対価の受け渡しもできますから、双方にとってメリットが大きいと言えるでしょう。ただし、どうしても買い手企業の立場が上になりがちなので、従業員同士でわだかまりが生まれることもあるよう。

会社分割

会社分割は、特定の事業や全ての事業を切り離して、別の会社に移転させることを指します。「吸収分割」と「新設分割」の2種類に大別されますが、それぞれの特徴については以下の通りです。

  • 吸収分割
    吸収分割は、簡単に言えば「移転先が既存の会社である」場合を言います。事業を切り離した分の対価を売り手企業が受け取る分社型吸収分割と、事業を切り離した分の対価を売り手企業の「株主」が受け取る分割型吸収分割があり、両者の違いは会社同士の縦の繋がりができるか、株主を介して横の繋がりができるかだと言えるでしょう。

  • 新設分割
    新設分割は、吸収分割に対し「移転先が新たに設立した会社である」場合です。こちらも分社型と分割型に分かれますが、吸収分割がお互いに縦横の繋がりを作りやすいのに比べ、新設分割、特に分社型は持株会社を造りやすいというメリットがあります。分割型の場合はグループ企業の再編に適しているというのも特徴ですね。

株式交換

株式交換は、文字からするとM&Aを行う会社同士がそれぞれの株式を交換すること……と勘違いしがちですが、実際には「買い手企業が売り手企業の株式を100%取得し、かわりに自社株を対価として完全子会社化する」ことを言います。つまり、売り手企業は支配権を完全に買い手企業に与えることになるのです。

買い手企業のメリットとしては、M&Aに現金が必要ない、という点が挙げられます。売り手企業としても既存の社名を存続できる利点がありますが、一方で現金が手に入らないというデメリットも存在しますから、そこに関しては注意しなければなりません。

事業譲渡

事業譲渡は、M&Aの中でも会社そのものを売るのではなく「一部の事業を切り離して譲渡する」方法です。

売り手企業はその事業に対する支配権を全て失うことになりますが、自社を存続しつつ中心的な事業に集中したり、利益を得て次の事業を起こしたりといったことが可能になるため、メリットも大きいと言えるでしょう。

また、買い手企業はそれに伴って従業員やノウハウなども譲り受けることができますから、買う側にとっても利益が大きな方法です。更に、引き継ぐ負債を選択できるため、簿外債務
が発覚しても支払う義務はありません。

思い立ったらどうする?会社を売却する流れとは

例えばこのような情報を見て「うちもM&Aを検討しようかな……」と思ったとします。しかし、もちろん一朝一夕に叶うものではないので、それなりに準備や手順が必要です。

では、会社を売却する際の大まかな手順や流れは一体どのようなものなのでしょうか?

  1. M&Aの仲介会社に相談する
    まず、初めてM&Aを行う(専用の部署を持たない)企業が自力で成約させるのはかなり難しいと思った方が良いでしょう。そこで相談するのが「仲介会社」です。大手から中小企業の案件に強い特化型まで様々なところが存在しますから、ネットで代表的な業者を探ってみてください。

  2. 事前準備、資料作成
    買い手企業を探す前に、まずは自社の市場価値について正しく把握しておかなければなりません。帳簿や情報を整理したり、強みを探したりと、自社に相応しい相手と縁を結ぶために出来る限りの準備を行いましょう。これは基本的に仲介会社との協力により実施されますが、中には別途料金がかかる場合もあるので注意が必要です。

  3. 買い手企業を探す
    いよいよ買い手企業を探します。これは仲介会社と契約していれば向こうが候補先を提案してくれるはずですが、昨今ではネットから相手企業を探し合えるツールも存在するため、オンラインでのやり取りに慣れている方や小規模のM&Aを希望する方は、ここまでは自力で可能かもしれません。

  4. 買い手企業と交渉、監査
    目星がついたら、買い手企業の経営陣と双方の条件を照らし合わせながら交渉していきます。対価や売買後の従業員の待遇、どのような方法でM&Aを行うかなど、話し合う内容は様々です。また、契約前に買い手企業から売り手企業に心配な点がないか監査が入りますから、注意しておきましょう。

  5. 売買契約成立
    全て滞りなく済めば、売買契約成立です。大抵は監査前にいったん仮契約を交わし、問題なければ本契約、となります。仲介会社によってはその後のアフターフォローまで担ってくれるところもあるので、契約の際に確認しておくと安心でしょう。

本来はもっと手順が増えることもありますが、大まかにはこのような感じです。売り手企業は自社の市場価値を突き詰め、正しく把握できるほど納得できるM&Aに至る可能性が高まるので、準備期間として2年程度を見ておくのが理想的だと言われています。思い立ったらすぐに焦って進めるのではなく、しっかり事前準備をしておきましょう。

仲介会社の特徴を押さえ、自社に合ったM&Aを

注意しておきたいのは、相談するM&Aの仲介会社には様々な特徴があること。特に大手の場合、どのような企業の相談でも受け付けてくれるとは限りません。最低報酬として数千万円以上、数百万円以上など最低限のラインが決まっていることがほとんどですから、自社の規模を正確に見ておくことも重要です。

昨今では個人事業主でも使いやすいマッチングサイトも多数生まれているため、まずはどこに相談するか、どのような方法でM&Aにチャレンジするかを考えてみてくださいね。

トピック:M&A仲介

更新日:2020-10-16

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