事業売却とどっちが高い?会社売却の相場とは

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事業売却とどっちが高い?会社売却の相場とは

岡本 友彦(税理士)
この記事の監修者|岡本 友彦(税理士)

1978年高知県生まれ。1997年土佐塾高等学校卒業。2001年近畿大学理工学部土木工学科 中退。その後、小規模税理士事務所勤務16年を経て、2017年税理士試験で官報合格、翌年 税理士登録。現在は経営革新等支援機関の認定を受けて、中小企業のIT導入や経営計画書 策定支援、事業承継支援を主に活動中。

昨今ではM&Aが比較的身近なものになったこともあり、様々な理由から会社を売却する中小企業が増えています。しかし、せっかくなら出来る限り明瞭な利益を得たいものですよね。

そもそも、会社売却とは一体どの程度利益が出るものなのでしょうか?事業売却とも比較しつつ、その相場について見てみましょう。

会社売却の相場は、事業売却よりは高い

まず、会社売却の相場に関して知っておきたいのが「事業売却の相場よりは高い」ということ。事業売却というのは会社そのものではなく特定の事業のみを切り離して売却することで、企業自体は存続できるので、比較的リスクが少ないM&Aとして知られています。

しかし、やはり相場を見ると会社そのものを売却する方が対価は大きいようです。従業員や事業に関しても丸ごと引き渡すことになるため、経営者にとってはより慎重に行わねばなりませんが、事業承継したい相手がおらず、創業者利潤(対価)を得たい場合は考えてみてはいかがでしょうか?

相場となる基本価格は、公式である程度算出できる

さて、様々な事情から会社売却を検討し始めたとします。そこで重要なのが「自社を売ったらどれくらいの価値になるのだろう?」ということですよね。

会社は売れば利益が出ますが、もちろん負債の方が大きい会社や、全く売上を伸ばせていない会社は高値では売れませんし、最悪買い手がつかないこともあります。

ですから本格的にM&Aを考える前に、以下の公式から自社の市場価値をある程度算出してみるのがおすすめです。

  • 純資産(貸借対照表の純資産にあたる合計の数字)+3年間の当期純利益

例えば現在の総資産が1,500万円であったとして、1年間の純利益が2,000万円×3年だったとすると、現在の自社はおよそ7,500万円で売れる可能性があるということになります。

数字だけ見れば果てしないように思えますが、会社として月200万円の利益を3年出し続け、純資産が1,500万円ほどになれば7,500万円の価値が付くかもしれないわけですから、まさに継続は力なりといった感じですね。

逆に言えば、過去10年以上同じ売上を出していても価値はそれほど変わらないということなので、3年間頑張って利益が上がったところで売却する、という投資的な起業をする方がいるのも頷けます。ただ、あくまでも上記は算出法の一例ですから、これだけを頼りにM&Aに乗り出すのは注意した方が良いでしょう。

売却価格は、評価方法によって異なることも

売却価格は、前述した計算方法からも分かる通り「会社の規模や売上」によってかなり変動します。しかし、その他にも「評価方法」が違うだけで、売却金額が変化することもあるようです。今回は特に代表的なものを見てみましょう。

時価純資産法

時価純資産法は、会社のある時点での財産価値を時価として評価し、そこから負債を差し引きます。そして技術力やネームバリューなどの付加価値を上乗せすることで、売却価格を算出する方法です。

この方法のメリットは、現在の価値が分かりやすいこと。また、ある程度の客観性があることです。ただし、付加価値が上乗せされるのは黒字企業が前提となっているため、負債が大きい売り手企業の場合は使用しにくいというデメリットも。

類似会社比較法

類似会社比較法は、まず売り手企業と類似(事業規模が似ている)する会社を複数取り上げ、それぞれの経営指標を比較します。そして、売り手企業にその経営指標を当てはめたらどうなるかを計算し、企業価値を図るというものです。

メリットとしては偏った評価になりにくいという点や、他企業と強みや弱みを比べられるという点があります。しかし、新規事業やニッチな事業を取り扱っている会社の場合は類似企業が見つかりにくく、正確な値を出せないというデメリットも。

DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法

これは最も定番とされる算出法で、簡単に言えば以下のような計算式で導き出されます。

  • 企業価値=企業が生み出すフリーキャッシュフローの期待値-加重平均資本コスト(WACC)で割り引いた現在価値

つまり、将来発生するであろうフリーキャッシュフロー(純利益)から、リスク等を加味した現在の価値を割り引くことで売却価格を算出するというものですね。メリットとしては将来的な期待値を反映させた上で合理的な価値を判断できるという点が挙げられます。ただし、事業計画が必要になるので、その精度(客観性)に左右されがちなのがデメリットのようです。

売却価格をアップさせるためのポイントは?

前述した通り、企業価値(売却価格)は規模や将来性を踏まえ、どの算出方法を取るかによっても変わってきます。

とはいえ、大切な会社を手放すのですから、出来る限り高い対価を得たいと考えるのは当然のこと。売上や資産価値はもちろん、以下のようなポイントを押さえて売却価格をアップさせられるよう準備しておきましょう。

  1. 他社にはない強みを探す
    自社の強みについて、正確に把握しておくことは非常に重要です。同業であっても技術力や資金力、営業力などは違ってきますし、同じような目的の商品であっても必ずそれぞれになくてはならない個性が存在します。ですから、M&Aの前に「自社ならではの売りはなにか?」をしっかり考えておく必要があるでしょう。

  2. 人材(従業員)を合わせて売却する
    人材を売る、と言うと聞こえは悪いですが、優秀な従業員は会社の財産です。今回の対価を元手に新規事業を立ち上げるからついて来て欲しい、という人材もいるかもしれませんが、手放す事業にとってなくてはならない技術を持つ社員がいれば買い手企業に引き継げるよう、しっかりと信頼関係を築いておきましょう。また、全体的に社員の技術力が高い、ということであれば、それを価値のひとつとしてアピールするのも良いですね。

  3. M&A後の将来性に関してもしっかり思い描いておく
    どれほど素晴らしい技術をもつ会社であっても、営業力がなければなかなか成長できないことも多いですよね。逆に言えば、自社の魅力をきちんと伝える力があれば予想以上に価値を見出してもらえる可能性もあります。仲介会社からも万全のサポートが得られるよう、将来性やM&Aへの展望についてどう相手に話すかを事前に考えておくと良いでしょう。

売却益だけじゃない!仲介会社への「成功報酬」も考えておこう

会社を売却した場合の相場や、価値を高めるためのポイントについてご紹介致しましたが、少々注意点もあります。それは、売却金額をそのままそっくり利益としてもらえるかどうかは分からない、ということ。

なぜかというと、M&Aではほぼ100%交渉や契約をサポートしてくれる仲介会社を頼ることになります。となると、当然成約すればその成功報酬として費用を支払わねばなりません。

成功報酬は一般的に成立した金額の5%~1%程度とされているため、税金のほかに仲介会社への費用も差し引かれる、と覚えておきましょう。

トピック:M&A仲介

更新日:2020-10-16

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