赤字で倒産させるのは早い!赤字でも会社売却ができる可能性があります

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赤字で倒産させるのは早い!赤字でも会社売却ができる可能性があります

会社売却
この記事の監修者|山田 新(公認会計士)

公認会計士試験合格後、2005年12月に中央青山監査法人(現PwCあらた有限責任監査法人)に入社。その後、株式会社ディー・エヌ・エー、都内の税理士法人を経て2014年3月に山田新公認会計士・税理士事務所を静岡市に設立、独立開業。 法人個人の申告、相続税申告から会計監査、会計コンサルティングまで幅広くサービスを展開。(山田新公認会計士・税理士事務所)

赤字でのM&A(会社売却)

M&Aといえば、基本的には「後継者不足や人手不足などで経営の限界を感じている売り手側企業」が「その会社に関心をもつ買い手企業」に事業を譲渡、承継することで存続させる方法というイメージ。

経営不振に陥った会社が身売りをする、というネガティブな印象もありますが、実際にはあくまでも買い手側企業が売り手側企業に魅力を感じたからこそ行われるもので、経営自体は順調ということも珍しくありません。

では、逆に完全なる赤字経営、経営不振という場合には、買い手側企業にとってうま味なしということでM&Aを断られる、となってしまうのか?と思ってしまいますよね。

しかし、赤字だから諦めるのはまだ早いと言えるでしょう。赤字でも会社売却が可能な例は確かにあるのです!

赤字でも会社の売却はできる!検討できる例とは
まず、結論から言えば経営が赤字の会社でも売却(M&A)はできます。他の再建方法も含め、具体的には以下のような可能性があるので、自社にとって最適な形は何かを考えてみましょう。

事業譲渡

M&Aの代表的な手法のひとつが「事業譲渡」です。これは一部の事業に関する権利や財産、義務などのみを買い手側企業に譲渡(売却)するもので、経営権の移転を行わないのが特徴。売り手側企業には一部のみを切り離して売却できるメリットがあり、買い手側企業にとっては無駄な負債を背負わず欲しい部分だけ購入できるメリットがあります。

株式譲渡(会社売却)

これが言わば「会社売却」と呼ばれるもので、自社の株式を譲渡することで売却を行う方法です。会社分割の場合に必要な特別決議や債権者保護の手続きなどといった面倒が必要なく、経営権をそのまま引き継げるので従業員への義務や債務なども自動的に買い手側企業へ移動する上、税率の面でも売り手側企業に有利な方法だと言われています。

黒字企業との合併

現在順調に黒字経営を行っている会社と「合併」するという手もあります。黒字会社にとっては合併後の利益と損失を相殺できるという点で節税のメリットがあり、上手くいけばシナジー効果による収益アップも期待できるのが特徴です。ただし、赤字企業とわざわざ合併するということは、業績が芳しくないのではないか?と外部から懸念されるというデメリットもあり、理想的な買い手側企業を見つけるのは難しいかもしれません。

赤字経営同士の合併

逆に、同じように赤字経営に陥っている会社と合併するという方法もあります。これは一見なんのメリットもないように思えますが、双方の事業内容に深い関連性があれば互いの欠点を補い合い、シナジー効果を期待できることもあります。ただし、赤字同士の合併は外部から良い印象を持たれることが少ないので、慎重に事を運ばなければなりません。

何かしら強みがある企業はチャレンジ!「会社売却に向いている赤字企業」
とはいえ、赤字企業が会社売却をはじめとした方法によって再建するためにはまず「相手企業」がいなければ話になりません。特に上記を見れば分かるように、会社売却は手続きや税率の面で他の再建方法よりも売り手側企業に有利な分難しいものでもあります。

では、同じように赤字でも「売却できる企業」と「売却できない企業」があるのはなぜでしょうか?

売却が期待できる赤字企業の特徴としては、以下のようなポイントが挙げられます。

事業内容に成長が見込める

最初に考えるべきは「買い手側企業にとって自社はシナジー効果が見込める存在であるか?」ということ。シナジー効果は言わば相乗効果のことで、互いがM&Aを行うことにより何らかの新たな利益が発生することです。

赤字企業でも、例えば「この事業は方法によっては化ける!」と思われるような成長性があれば買い手企業側も食いつきます。自社の事業を見直し、今後成長できるような点がないかよく考えてみましょう。

強みとなる無形資産を持っている

事業そのものに成長性が見込めなくても、ノウハウや特許など「ここにしかない」無形資産があればM&Aの相手企業として興味を持ってもらえることもあります。

また、地域ならではの伝統的な商品を取り扱っている、老舗としての歴史があるなど、少数ではあれど長年愛されてきた基盤がある、というのもこれに当てはまるでしょう。

従業員数が多く、それなりに規模が大きい

更に、赤字に陥るまではそれなりに業績を上げており、一定以上の規模や従業員数を有しているという場合にもM&Aの声がかかる可能性が高いと言えます。

この他にもM&Aを行う際にはタイミングや正確な自社分析などが重要とされていますが、上記のいずれかに該当するのであればぜひチャレンジすることをおすすめ致します。逆に「会社売却を諦めて倒産した方がよい」と言われる赤字企業は、

  • 事業内容に将来性が見込めず、無形資産も有していない
  • 特に長く経営してきたという歴史もない
  • 従業員がごく少数で、廃業の影響を受ける人も少ない

となります。これらの全てに当てはまる場合は、残念ながら会社売却はもちろんM&Aに挑戦する方が余計な資金や労力を使うことになりますので、倒産(廃業)を検討するのが良いでしょう。

社長や社員はどうなる?赤字企業の会社売却の流れ
では、赤字企業が会社を売却するためには、どのような手続きを踏む必要があるのでしょうか?順を追って見て行きましょう。

M&Aアドバイザリーへ相談

会社の売却は当事者同士で行うこともできますが、初めての場合は「M&Aアドバイザリー」に相談するのが一般的です。

これはM&Aに関する仲介を行ってくれる専門業者のことで、買い手側企業を紹介してもらうこともできます。もちろん、成功のためのアドバイスも受けられるので、安心して任せられますよ。

買い手側企業の選択、及び条件を交渉

基本的には、アドバイザリーが提案してくれた買い手側企業の候補から気になるものを選び、相手方も売り手側企業に興味を持っていれば「双方の条件を交渉する」という流れになります。

どちらも契約に関して異論はない、と合意すれば「基本合意契約」です。どのような方法で売却を行うか、その後の社長や社員の処遇なども話し合われる中で重要なポイントと言えるでしょう。

デューデリジェンス手続き(監査)

デューデリジェンスとは、買い手側企業が「本当にM&Aアドバイザリーが提示した情報は間違っていなかったのか?」「売り手側企業の状況に嘘はないか?」などを監査した上で、最終確認を行うこと。

これを疎かにすると後々大きな齟齬を生む恐れがありますから、売り手側企業もデューデリジェンスには積極的な協力が求められます。買い手側企業にとっては、無駄な損失を増やさないための正当な手続きなのです。

最終的な契約の締結

デューデリジェンスが無事に終われば、買い手側が「では、この値段で買わせて頂きます」という価格を決定し、最終契約となります。ただし、ここで売り手側企業が適正価格でない、と考えた場合には、最後の最後で白紙になることも。

契約が締結すれば、あとは再度組織の統合や再建について動かねばなりません。基本的に従業員の待遇やポジションはそのままに引き継がれることが多いですが、社長は役員として続投することもあれば、M&Aの目的によっては引退することもあります。

まだ望みはある!倒産の前に「会社の売却」を検討しよう

いかがでしょうか?M&Aは赤字企業にとっては難しいことのように思えますが、何かしらの強みがあれば良い買い手企業が見つかり、存続できる可能性もあります。

M&Aアドバイザリーへの相談も、売り手側企業はほぼ無料で利用できることも多いですから、経営不振に陥っている企業はぜひ一度ご検討ください。

会社売却を行うと、借入金は一体どうなる?

昨今では後継者不足や老後、新事業の資金を得る目的などから、中小企業の間でも盛んになっている会社売却。相応しい買い手が見つかれば従業員ごと引き受けてもらえますし、対価も支払われるので、モチベーションが衰えた経営者にとっては非常に魅力的ですよね。

しかし、現在「借入金」がある場合、会社売却後にその扱いはどうなるのでしょうか?そもそも借入金とは何かという問題から、順に見て行きましょう。

そもそも借入金は「銀行や取引先などから借り入れたお金」を言う

そもそも借入金とは何か?というと、銀行や取引先、親会社、親族などから借り入れたお金のことです。ただ現金を受け取るだけではなく、借用証書や約束手形を用いることによって金銭のやり取りがあったことを証明します。

つまり、当たり前のことですが例えどんなに親しい間柄であっても、基本的になかったことにはできません。一般的には以下の「長期借入金」と「短期借入金」に分かれ、それぞれ返済期限が決まっています。

  • 長期借入金…支払期限まで1年以上ある借入金
  • 短期借入金…支払期限が1年以内と決まっている借入金

ただし、会社によっては上記を明確に分けているわけではなく、まとめて処理していることもあるようです。

借入金には利息が生じますが、借入利息は営業外費用(経費)として落とすことができるため、節税対策の名目で使われることも。ただし、返済元金(実際に借りたお金)に関しては経費にならないので、注意しなければなりません。

会社が苦しいから借りるわけではない?借入金のメリット

借入金はいわば会社の借金ですから、これだけ聞くと「資金が厳しいから借りるのであって、本当はない方がいいんだよね?」と思うかもしれません。しかし、借入金には実は様々なメリットも存在するため、あえて融資を希望する企業も多いのです。

必ず利益が出る事業の場合、借りれば借りるほど収益は上がる

例えば借入金に対して利息が10%あったとしても、それを基に30%以上の利益が出る事業を行う場合、会社は20%の収益を得ることができます。そのため、更に収益をアップさせる目的で融資を受ける会社もあるのです。

借入金なら結局返さなければならないのになぜか?という声は尤もですが、特に利益率が高い事業の場合、自分で資金を用意するよりもそちらの方が効率よく、かつ無理なく投資できるので、あえて借り入れを繰り返す経営者も多いようです。

会社の規模が大きくなれば、コスト削減も期待できる

借入金によって元々あった資金以上の収益を上げることができた場合、会社の規模自体が大きくなる可能性もあります。そうなると、例えば取引先から商品を仕入れる際にも1回あたりの仕入れ数が増えるかもしれませんよね。

売上が上がれば上がるほど単価が下がる現象と同じで、一度に仕入れる数が増えると1個あたりの単価が下がる傾向にあるため、結果的にはコスト削減も期待できるとされています。

取引先や金融機関との信頼関係を強める

例えば銀行から融資を受けるのは会社を立ち上げる時、というイメージを持つ方も多いでしょうが、その後も借入実績を重ねていけば、更に信頼関係が強まることになります。

金融機関に信頼されれば、いざ高額の融資を受けたい時にもすぐに対応してもらえる可能性が高いので、これは非常に大きなメリットです。取引先に関しても同じことで、お互いの繋がりを深める意味でも効果的と言われています。

会社売却の際、借入金の扱いは「売却方法」による

では、会社売却を行う際の借入金は一体どうなるのか?というと、結論から言えば「売却方法による」と言えます。M&Aの方法は様々ですが、借入金については大きく分けて「株式譲渡」を選ぶか「事業譲渡」を選ぶかで違いが出るでしょう。

株式譲渡

株式譲渡は、売り手企業が買い手企業に対して自社の株式を譲渡することにより、経営権を丸ごと引き渡す方法です。特定の事業のみならず会社そのものを譲るという形になるため、複雑な手続きが不要で現金化が早いのがメリットと言われています。

その他の株式譲渡の利点については、以下をご覧ください。

  • 売り手側が受け取れる売却額が大きい
  • 後継者問題や従業員の雇用に悩まなくて済む
  • 自社が更に発展する可能性もある

会社そのものを売るということで、事業のみを売る場合より対価が大きい可能性が高いことはもちろん、経営者が変わるのでそれまで伸び悩んでいた会社でも更なる発展が期待できます。

また、売却を検討する中小企業において悩まれがちな「後継者問題」や「今いる従業員はどうなるのか」といった不安が一気に解消されますから、相性のよい買い手企業が見つかった場合には適した方法と言えるでしょう。

事業譲渡

対する事業譲渡は、売り手企業の一部の事業のみを切り離して買い手企業に譲ることを言います。会社そのものを売却するわけではないので、企業自体を存続したまま不採算事業のみを手放すこともできるのが最大のメリットです。

その他の利点については、以下をご覧ください。

  • 特定の事業に関する後継者問題を解決できる
  • 負債が多い場合でも、利益率の高い事業があれば譲渡できる可能性がある
  • 法人格を継続させることが可能

例えば株式譲渡の場合は会社ごとの売却になるため、負債が多かったり不採算事業の割合が大きかったりすると会社売却が難しいこともあります。しかし、事業譲渡は買い手企業にとってメリットが大きい事業のみを選択して売ることができますから、非常に効率的です。

事業譲渡の場合「借入金」は引き継がれない

ここまでをご覧になれば、何となく分かるかもしれませんね。株式譲渡は会社ごと売却する方法なので、つまるところ「借入金」も一緒に引き継がれます。

しかし、事業譲渡の場合は引き継ぐ資産を選択することが可能となっているので、買い手企業に借入金の返済義務はありません。そのため、一般的には売り手企業側が譲渡価格によって借入金を返済するというパターンが多いようです。

借入金は会社にとって利益をもたらすこともありますが、基本的には「負債」として扱われます。なので、借入金が大きい会社が株式譲渡を行うには、それを上回る利益を出していることが重要となるでしょう。

例えば株式譲渡により買い手企業が借入金を引き受けた場合にはどのような手段で返済することが多いのか?というと、大抵は以下のような手法が取られます。

  • 株式譲渡後、買手企業が借入金を一括返済
  • 買い手企業が借入金の借り換えを行ったのち、徐々に返済する

借り換えというのは、高い金利で組まれていた借入金を出来る限り低金利で組みなおすことです。一般的には金利が安い別の金融機関で新たに借り入れをし、そのお金で元々の借入金を返済する、という方法ですね。

借入金がある時は、会社売却の手法を工夫しよう

上記の通り、借入金は株式譲渡と事業譲渡、どちらの手法を取るかによって扱いが変わるということが分かりました。

一見事業譲渡の方が手軽なようにも思えますが、規模が大きい会社の場合は株式譲渡の方が得になる可能性もあります。借入金がある時には、様々な視点から売却方法を検討する必要がありそうです。

メリットも多い!会社売却が社長にもたらす効果とは

昨今では仲介会社やマッチングサイトなど多数の専門サービスが登場し、中小企業や個人事業主の間でも盛んになっているM&A。中でも「会社売却」は経営者にとっても利益が大きいということで、最もポピュラーな方法のひとつです。

しかし、会社売却を行った場合、売り手企業は支配権の一切を失ってしまいますよね。では、社長(経営者)は一体どうなってしまうのでしょうか?引退しか方法がないのか、それとも働き続けられるのか?気になる事情を探ってみました。

会社売却の後は、主に3つの道がある

売り手企業の社長は、会社売却を行った後主に3つの道が考えられます。具体的には以下の通りです。

  • リタイアし、対価で余生を楽しむ
    経営者としての人生を完全に引退し、売却によって得た対価で残りの人生を有意義に楽しむという方法。社長業は充実もしていますが、その分心労も多いものです。こういった道に憧れ、会社売却を選択する経営者も少なくないよう。

  • 顧問や、相談役として働き続ける
    支配権は売却しているため、代表権を得ることはできませんが、買い手企業の了承を得ればそのまま相談役や指導者として働くことは可能です。数年の期間を決め、顧問として事業を引き継いだ後リタイア、という道を選ぶ方も多いとのこと。

  • 対価を元手に、新規事業を始める
    売却した対価を元手に、また新たなビジネスを始めるという手もあります。今の会社には限界を感じているけれど、経営者としてのモチベーションはまだまだある、という方が選択することが多い道です。別事業に挑戦するためにあえて会社を売る、という方もいるよう。

会社売却による社長にとってのメリット

社長として会社を売却した場合、前述のように経営者には意外と様々な道が存在します。しかし、経営者にとって会社売却は単純に対価を得られるだけではありません。実は他にも、いくつかのメリットがあるのです。

後継者不足の場合、事業承継ができる

特に中小企業は、業績的には問題ないけれど後を継ぐ人間がいない、という事情から、会社売却を検討することが多いようです。取引先や顧客、社員などのためにも事業は存続したい場合、M&Aを行うことで事業承継が可能となります。

社員は基本的にそのまま買い手企業のもとで働き続けられますし、商品やサービスも今まで通り提供できますから、その後も安心です。

連帯保証から解放される

これは会社の借入金について、代表(社長)が連帯保証契約を結んでいる場合に考えられるメリットです。つまり、万が一返済できなかった時にはその責任を経営者が負うというものですね。

しかし、会社売却では負債も買い手企業に引き継がれるため、連帯保証からは解放されることになります。

シナジー効果により、更なる発展を遂げる可能性も

会社である以上成長を望むのは経営者として当たり前のことでしょうが、単独では資金的にもアイディア的にも限界があります。

しかし、例えば自社に足りない資金力を補ってくれたり、自社にはない技術を持っていたりする買い手企業に会社売却を行えば、シナジー(相乗)効果により更なる発展が期待できることも。そういった将来性が認められれば、対価もアップする可能性が高いでしょう。

会社売却による社長にとってのデメリット

とはいえ、もちろん良いことばかりとは限りません。以下のようなデメリットが生まれる恐れもあるため、売却は慎重に行う必要があるでしょう。

思ったほど高く売れないが得られない恐れも

会社売却による対価は間違いなく発生しますが、社長が想定していたよりも市場価値が低く、予想以上に高く売れない、という恐れもあります。

しかも意外と税金がかかるため、完全にリタイアするには貯蓄が心もとない、新規事業を始めるにも元手が足りない……なんてことにもなりかねません。事前に自社の企業価値をしっかり把握しておく必要があるでしょう。

社員から非難を受けることもある

会社売却は経営者にとってはメリットも大きいですが、役員や社員にとってはデメリットの方が目立つこともあります。

以前の会社とは全く違う環境で働かされることになり、待遇も悪化した、全く傾向が異なる外資系企業に売られた……など、様々な理由から元役員や従業員に恨まれることも少なくはないようです。

ストレスが大きく、新規事業を始める場合は制限がかかることも

対価を得たあたりでは会社を売却して良かった!と思ったけれど、徐々に寂しくなってしまった……なんて経営者も少なくありません。

社長と呼ばれなくなったこと、意外と仕事が生きがいになっていたことに気づいたこと……理由は様々ですが、いざリタイアしたり社長以外の立場で働いたりしてみると、何となく虚しさを覚えるというわけですね。

また、そこで新規事業を始める場合、競業避止義務として一定期間は「売却した事業の領域に携わることができない」制限がかかるため、注意が必要です。全く別のアイディアがあるなら良いのですが、同じ仕事をしたいなら少なくとも3年程度は待たねばなりません。

会社売却を円滑に行うために、社長が押さえるべきポイントは?

では、会社売却を円滑に行うにあたって社長が押さえておくべきポイントには、一体どのようなものがあるのでしょうか?順に見てみましょう。

  1. 信頼できる仲介会社を見つける
    まず、初めての会社売却で社内に専門部署がない場合、仲介会社やアドバイザリーに頼るのが一般的です。中小企業に特化している、アフターサポートまで充実、手数料(報酬)がリーズナブルなどそれぞれに特徴がありますから、自社にとって最も信頼できそうなパートナーを見つけるのが先決だと言えるでしょう。

  2. 企業価値を正確に見定める
    特に自分が創業者の場合、会社への思い入れからつい企業価値を高く見積もってしまうことも多いと言われています。しかし、それでは期待どおりの対価を得られず売却後に肩を落とす羽目になったり、そもそも買い手企業が見つからなかったりする恐れも。仲介会社とも相談しつつ、自社の市場価値をしっかり見定めることが大切です。

  3. 役員への根回しがカギ
    社長は少なくとも対価を得ることができますが、売却によって最も気落ちしがちなのが実は役員だと言われています。なぜならば後継者になることもできず、専門性の高い従業員とは違って冷遇される恐れもあるから。ですから会社売却を検討した場合、まずは役員たちから順にトップダウン形式で丁寧に説得していきましょう。買い手企業との交渉の際に、役員の待遇についてしっかり話し合うことも必要です。

  4. 売却後のビジョンを明確にしておく
    リタイアが目的だったけど、実際退職したら意外と仕事に対するモチベーションが残っており、生きがいを失ってしまったことに気付いた……または新会社を立ち上げようとやる気になっていたものの、実は現在の事業と業界がほぼ同じだった……などの問題を生まないためにも、売却後どうしたいかというビジョンは明確にしておきましょう。

その後の未来は?会社売却の後、売り手企業の社員の待遇を徹底調査

昨今では後継者不足や将来性に悩む中小企業が多く、仲介会社やマッチングサイトなどの選択肢も増えたことから、以前より盛んになっているという会社売却。

経営者にとっては「会社を存続しながら売却益が手に入る」「ある程度の資産を得て引退できる」といった理由から人気があるのは分かりますが、社員からすれば自社が売却されるというのはかなり不安ですよね。

自社が他の企業に支配権を譲るということは、社員は引き継がれないのでは?と心配になる方も多いでしょう。では、実際のところどうなのか、実態から探ってみました。

会社売却の後は、従業員の待遇は変わらないことが多い!

会社売却によって買い手企業に支配権を譲った売り手企業ですが、重要なのは「社員も財産に含まれている」ということ。つまり、買い手企業は労働力や社員がもつノウハウなども込みで魅力を感じたのです。

そのため、会社売却が行われた後も社員の雇用はそのまま継続されることがほとんど。建物も存続される場合は今まで通り働くことができますし、職場が変わっても待遇は変わらないと考えて良いでしょう。

会社売却による社員にとってのメリット

会社売却は、経営者だけでなく社員にとっても様々なメリットが存在します。代表的なものとしては以下の通りです。

以前より大規模な組織でキャリアアップが可能になる

買い手企業は、一般的に売り手企業より規模が大きい会社であることが多いので、社員は以前より大規模な組織で働くことが可能となります。

また、様々な分野を手掛けていたり、新規事業参入に積極的だったりする買い手企業であれば、思わぬところでの活躍も期待できるでしょう。もっと成長したい、色々なことにチャレンジしたいという向上心や好奇心がある人なら、会社売却はプラスになる可能性が高いと言えます。

より安定した会社で働ける

安定志向の方にとっても、会社売却は多大なメリットをもたらします。一般的に売り手企業は将来性や業績などに限界を感じて会社を手放すことが多いため、買い手企業に経営権が移ることで、より安定した環境で働けるようになると言えるからです。

いつ倒産するか分からない、という状況では、働く意欲はあっても不安がつきまといますよね。しかし、現在より大きな資金力をもつ買い手企業に売却されれば、将来的な心配も軽減されることでしょう。

上手くいけば昇給や昇進などのチャンスも

買い手企業にとって、売り手企業の社員は貴重な人材です。特に専門的な知識をもった人や場を統括していた人などは、新たに雇おうと思ってもなかなか急にはやって来ませんし、そこまで教育するのにも手間や費用がかかります。

そのため、売り手企業の中でもなくてはならない存在だと評価されれば、昇給や昇進などのチャンスも。買い手企業の資金力次第では前の元の会社以上に昇給が見込め、予想以上の恩恵が得られる可能性もあります。

会社売却による社員にとってのデメリット

しかし、やはり環境の変化には問題もつきもの。以下のようにデメリットを被る恐れもあるため、会社売却は慎重に行わねばなりません。

契約内容によってはリストラのリスクも

買い手企業は売り手企業から支配権を譲り受ける際、大抵社員の雇用についてはこれまで通りの条件を維持する、という契約を結びます。しかし、絶対ではありませんから、契約内容によってはリストラのリスクがないとは言えません。

また、リストラにならなくても人間関係には相性があります。例えば、これまでの上司には評価されていたのに、上司が変わったら上手くいかなくなった……なんて恐れもあるのです。

不慣れな環境で仕事せねばならなくなる

買い手企業に支配権が移った以上、少なくとも経営方針が変化するリスクは存在します。そうなると社員は予想以上のノルマを課せられたり、価値観が違ったりして苦しむかもしれませんよね。

また、職場が変わると通勤時間や職場環境も変わるので、それだけでストレスが溜まることも。条件的には以前と同じでも、やはり気持ち的な違和感は多少生まれるのではないでしょうか。

専門性を持たない場合、待遇が悪化する恐れも

買い手企業にとって売り手企業の社員は貴重、と言いましたが、もちろん社員ごとの評価は異なります。組織の一員としていなくてはならない人、として見なされない場合、むしろ待遇は悪化する恐れもあるのです。

例えば専門的な知識や技術を持っている、営業として多数の顧客を抱えているなど、具体的な何かがある人にとって会社売却はプラスになる可能性も高いですが、特にキャリアアップを望んでいない人に関してはマイナスになることもある、と覚えておきましょう。

経営者は、社員への情報開示を慎重に

このように、会社売却は一部の社員にとってはメリットが大きいですが、変化を望まない社員にとってはデメリットが大きくなる恐れもあります。そのため、経営者の方は社員に伝えるタイミングを慎重に行う必要があるでしょう。

情報開示は、経営者に対する社員の信頼にも拘わる行為です。最悪の場合以下のようなリスクが生まれることもあるので、タイミングだけでなく誰から話すか、も重要だと覚えておいてくださいね。

社員への伝え方を間違えると?

  • 優秀な社員が将来への不安からいち早く退職する
    まず、最も恐ろしいのが「優秀な社員が退職する」ということ。買い手企業との交渉を進める上でも、人材を確保したまま売却できるかは重視すべき課題です。しかし、会社売却の話が早い段階で漏洩してしまうと、この会社には先がないのでは?という不安から多数の社員が退職する恐れがあります。

  • 社員同士でわだかまりが生まれる
    会社売却、買収などの言葉には、未だにネガティブなイメージがつきまといます。社員は存続されることが多い、という情報を知らない人もいるでしょうし、優秀な社員のみが引き抜かれると勘違いする人も出るかもしれません。そのため、自分はリストラされるのではないか?同僚の中ではどういったポジションか?などと疑心暗鬼になり、社員同士の不和を生む恐れも。

  • キャリアアップを望まない社員の士気が下がる
    会社売却によって更に大規模な環境で働けることをプラスに考える人もいれば、現状維持のまま余計な責任を負いたくないと思っている人もいます。そのため、環境が変化することへの不安から、キャリアアップを望まない社員も転職を検討し始めたり、仕事へのモチベーションが更に下がったりする恐れも。

社員への情報開示は「トップダウン」形式で

社員への情報開示は、一度に全員に対して行うべきではないと言われています。経営陣に近しい立場の人から順に、トップダウン形式で徐々に開示していきましょう。

重役をまず説得し、最終的に社長が全体に伝える、という形にすれば、個々の上司から部下に対してのフォローも可能なので、組織としての信頼関係も保たれやすいようです。どうせリタイアするから関係ない、ではなく、経営者として最後まで勤めを果たした方が、その後の人生もきっと豊かなものになるでしょう。

ちゃんともらえる?会社売却の際の退職金

働いていた会社が売却されることになった、という場合、特に長年勤めた方が心配になるのが「退職金は出るの?」ということ。これをきっかけに退職しよう、という人もいるでしょうが、会社が不安定な状態でどこまで請求して良いのか迷いますよね。

しかし、退職金は基本的には従業員の権利です。後悔しないためにも、詳しい制度について確認してみましょう。

会社売却の場合、退職金は支払われる!

まず、勤め先が売り手企業として、買い手企業に会社売却(株式譲渡)を行う場合。この時には一般的に、規定通りの退職金が支払われます。つまり、数十年間働いたならそれだけもらえる権利が発生するのです。

  • 売却と共に退職するなら、そのタイミングで支払われる
    会社売却をきっかけに自分の仕事について見つめなおした結果、今の勤め先を退職しようという結論になった方は、そのタイミングで退職金が支払われます。売り手企業は買い手企業から対価を受け取れますし、買い手企業は資金力がある企業であることがほとんどですから、減額される心配もありません。

  • 働き続ける場合は、退職のタイミングで支払われる
    逆にその事業や職場に愛着があるため、買い手企業に支配権が移っても働き続けようという方は、退職したタイミングで支払われます。売り手企業から買い手企業に支配権が移ったからといって再就職扱いにもなりませんので、安心して仕事を続けてください。

ただし、事業譲渡の場合は減額される恐れも……。

しかし、会社売却ではなく事業譲渡の場合、退職金は減額される恐れがあるようです。なぜかというと、事業譲渡で売り手企業から買い手企業に職場が移る場合、いったん売り手企業を退職して買い手企業に就職する、という形になるから。

事業譲渡は特定の事業のみを切り離して売却する方法なので、買い手企業と売り手企業はあくまでも別会社のまま。退職金は勤続年数に応じて支払われるため、そういったケースで売却された事業に従事していたから、とそのまま買い手企業に移ることを選択してしまうと、結果的に定年で受け取れる退職金は減るかもしれないのですね。

ただし、売り手企業を退職する際にはもちろん退職金を受け取る権利が生じます。つまり、買い手企業に異動する前にいったん退職金をもらえる可能性があるのです。

また、中には「買い手企業に退職金の支払い義務を引き継ぐ」という方法をとる売り手企業も。事業譲渡により勤務先が変わる際には、退職金に関して一体どうなっているのかしっかりと確認しておきましょう。

「うちの会社に退職金はない」は許される?

しかし、昨今では「退職金が出ない」という嘆きの声も増えています。

本来退職金は勤続年数が長くなれば長くなるほど増えるもので、一定以上の金額が支払われると決まっているはずですが「うちには退職金制度がないと言われた」「出たけど10万円くらい……」なんて方も少なくないのです。

とはいえ、日本では退職金が出るものと思って就職する方もたくさんいます。法律上「退職金がない」は許されるものなのでしょうか?

就業規則を確認してみよう

まず、就業規則を確認しましょう。就業規則は従業員がいつでも閲覧できるようになっているのが決まりですから、見せられないと言われても関係ありません。そこに退職金についての規定がないか見てみてください。

就業規則に退職金制度がある、と記されていれば、それは支払い義務が生じるということです。制度があるのに支払わないのは違法行為となるため、責任者にしっかりと指摘しましょう。

退職金は5年以内に請求しなければならない

ただし、退職金の請求には5年という時効が設けられています。つまり、退職から5年経過してしまうと「あの時はもらえずに納得したけれど、法律を知ってから調べたらもらえたはずだと分かった」となっても、請求はできない決まりとなっているのです。

退職金は長年の労働の成果であり、今後の糧でもあります。会社売却をきっかけに退職金について調べた方は、ぜひ権利が行使できるうちに行動を起こしてくださいね。

本当に規定が存在しない会社もある

ひとつ注意しておきたいのが「退職金の支払いは義務ではない」ということ。法律上退職金の支払いは会社の裁量に任せられるものとなっているため、就業規則に存在しない場合は請求できない恐れもあります。

ただし、経営者から「君はよく働いてくれているから、辞める時には退職金を出すよ」といった軽口を言われていた場合には、請求できることもあるよう。証拠がなければ難しい部分もありますが、特に役員レベルの方は検討してみても良いかもしれません。

経営者の場合は「役員退職金」として受け取れる

社員に関しては以上ですが、会社を売却する際経営者も「役員退職金」を受け取れることがあります。これは対価とは別の括りとなっているため、上手くいけば対価以上の利益を得ることが可能なわけですね。

役員退職金のポイント

  1. リタイアするのであれば、会社売却のタイミングで受け取れる
    会社を売却した後は完全にリタイアし、支配権はもちろん社員教育や引き継ぎも買い手企業に任せるという場合は、そのタイミングで役員退職金を受け取ることができます。ただし、退職金があまり高額だと税金がかかるため、注意が必要です。

  2. 会社にしばらく残る場合は、退職の際に受け取ることになる
    会社を売却した後、数年ほど顧問や相談役として残り、引継ぎをするという選択をする方もいるでしょう。その場合、退職金を売却時に支払うことが認められない可能性もあります。そのため、後述するように退職金を節税対策として使用するのは難しいと考えた方が良いでしょう。

  3. 節税対策として用いられることもある
    役員退職金は、しばしば会社売却時の節税対策として用いられます。なぜかというと、売却益と役員退職金は別々に税金がかかるからです。それでなぜ節税になるの?と思う方もいるかもしれませんが、それに関しては次で詳しくご説明しましょう。

売却益と役員退職金を別々に受け取る理由

まず、役員退職金を決める際の公式を見てみましょう。

  • 退職時の月額報酬×役員勤続年数×功績倍率=退職金限度額

功績倍率とは何か?というと、役員在任中に会社にもたらした功績を任意の倍率で定めたものです。法律で倍率が決まっているわけではなく、例えば社長なら3倍、常務は2.5倍といった感じで、役職に応じて上下することが多いよう。

例えば月額報酬が200万円で20年働き、社長の功績倍率が上記3倍だとすると、役員退職金限度額は4,000万円×3で1億2,000万円となります。

この役員退職金は所得となるので、基本的に所得税や住民税などがかかりますが、合わせても全体の20%前後です。しかし、株主が法人である会社が会社売却を行った場合、売却益には法人税として30%以上の税金がかかることになりますから、結果的には退職金と分けた方がお得なのですね。

また、経営者にとっては会社売却の際従業員の退職金がかかるかどうかで、費用面の負担もかなり変わってきます。そのあたりもしっかり考慮しつつ、買い手企業との交渉を行いましょう。

会社売却における「繰越欠損金」ってなに?

昨今では中小企業の間でも増えている会社売却。後継者問題や業績不振などで悩んでいる企業でも、上手くいけばそれを解消した上で対価を得ることができるため、魅力的に感じる経営者も多いでしょう。

しかし、そこで注意したいのが「繰越欠損金」の有無。そもそも繰越欠損金とは何か?というところから、詳しく見てみましょう。

繰越欠損金は、過去の赤字を黒字と相殺できるというもの

繰越欠損金は、言葉だけ見れば負債のように感じますよね。

しかし、実はこれは節税対策として有効とされており、簡単に言えば「過去9年以内(平成30年4月1日以降に開始された事業年度において生じた場合は10年以内)に発生した赤字を、それ以降に出した黒字で相殺できる」というものです。(※繰越欠損を使えるのは青色申告の届けを出している場合に限る)

赤字=欠損金なので、つまるところ赤字を繰り越す、との意味になります。税金は基本的に収入に応じて高くなるため、黒字を黒字としたままで納税するよりも、過去の赤字と相殺した方が税金は安くなる、というわけですね。

念のため、具体的な例を見てみましょう。例えばとあるカフェが、2014年度に100万円の赤字を出したとします。この場合は収益より費用の方が大きくなるため、課税所得を0円として繰越欠損金を計上。

翌年(2015年度)に200万円の黒字が出たとしても、そのまま200万円分の税金を支払うと赤字分も含め損が増えてしまいますから、繰越欠損金が認められる場合は以下のように課税所得を「100万円」ということにして申請するのです。

  • 200万円(黒字)-100万円(赤字)=100万円(課税所得)

繰越欠損金のある会社は、会社売却によってどうなる?

では、会社売却を希望する会社に繰越欠損金があった場合は一体どうなるのか?というと、一般的には「親会社が子会社を合併するパターンであれば基本的には引き継がれるものの、要件を満たさないのであれば引き継がれないこともある」となっています。

それというのも、繰越欠損金を引き継ぐにはある制限がかけられているからです。不当に繰越欠損金を使って節税対策をする行為を防ぐために、以下のような決まりが設けられています。

  • 合併する会社と合併される会社の間に、50%超の資本関係が認められること
  • 資本関係が生じてから5年以上が経過していること

つまり「自社と関係が深い会社との売却ならば繰越欠損金を引き継ぐことができる」ということ。では、親会社と子会社レベルの関係でなければ難しいのかというと、実はそうではありません。

自社以外とのM&Aにおける繰越欠損金は、別途引き継ぎ要件が定められている

自社以外、つまり元々関連性のない会社との会社売却(M&A)において繰越欠損金は引き継げないのか?といえば、これは「みなし共同事業要件」というものを満たす必要があります。

事業関連性要件

買い手企業と売り手企業、双方の事業に関連があるかどうか。これはそれぞれの事業に属する収入や損益、従業者数、固定資産の状況などを総合的に見て判断されます。

これはそれぞれが固有施設(事務所や店舗)などを所有し、従業員を雇い、自己の名義かつ自己の計算によって商品販売や市場調査などを行っていることが条件となっているので、法人化された会社同士でなければ許されないと思って良いでしょう。

事業規模要件

これは簡単に言えば「買い手企業と売り手企業、それぞれの規模があまりにも違いすぎないこと」です。具体的にはそれぞれの売上金額や従業員数、資本金などに5倍以上の差がないことが条件とされています。

事業規模継続要件

事業規模継続要件は、合併企業か被合併企業かによって変わってきますが、それぞれが適格合併(法人税が課されない合併のこと)の直前まで営まれていること、そしてその直前における事業規模の割合が2倍を超えないことが条件となっています。

特定役員引継要件

これは買い手企業と売り手企業、双方の特定役員それぞれが合併後、合併法人の役員になることが見込まれている場合を指します。ただし、会社合併では一般的に売り手企業の役員は現役を退くことが多いため、その場合この条件は踏まえられないと考えて良いようです。

分かりやすく言えば「繰越欠損金を利用する目的の買収ではない、と分かるほど関係が密接である」ということですね。こういった事情から、基本的にM&Aでは繰越欠損金は引き継げないものと思った方が良いとされています。

繰越欠損金が引き継げない場合、赤字があった会社は売れる?

ここで気になるのが、繰越欠損金が引き継げないとなった場合、過去、特に直近で赤字があった会社は売れるのか?ということですよね。

会社売却は売り手企業にはメリットが大きいとはいえ、買い手企業から見て魅力がなければ選ばれないことも多いため、慎重に行う必要があります。

結論から申し上げますと、赤字がある企業だから会社売却ができない、とは限りません。なぜかというと、赤字にも色々な種類が存在するからです。赤字があっても買い手企業にメリットがある会社とはどういうものかというと、代表的な例は以下が挙げられるでしょう。

  1. 過去に投資を行った際の赤字で、現在は持ち直している場合
    まず、赤字の理由が投資目的であった場合。新規事業を始めるために資金を使った際に赤字、というのは決して当たり前ではありませんが、小規模な会社であればあり得ない話ではありません。現在正常に運営されているのであれば、買い手企業が気にしないこともあるようです。

  2. 赤字にはなっているものの、前向きに再生事業を行っている場合
    経営不振による赤字でも前向きに再生事業を行っており、かつそれが徐々に形になっている場合は、買い手企業側がその姿勢に魅力を感じてくれることがあります。赤字だからといって悲観せず、出来るところから負債を減らしていきましょう。

  3. 特別に優秀な従業員が在籍している場合
    会社にとっては、従業員も財産になり得ます。例えば他にはない技術を持った社員や、営業として顧客を大勢抱えている社員、雑務を素早くこなせる社員など、優秀な従業員が揃っている場合には、買い手企業にとって魅力となります。ただし、赤字企業は人員の入れ替わりが激しい傾向がありますから、辞職して欲しくない社員がいる時はそれなりの配慮が必要と言えるでしょう。

  4. 買い手企業と事業内容の相性が良く、経営者が変われば将来性が見込める場合
    最後に、ちょうど売り手企業が買い手企業にとって魅力的な事業を行っており、資金力不足や経営者の手腕がもとで思うように利益を上げられていないと思われる場合には、赤字企業であっても問題なく売却できることもあります。経営手腕には事業との相性も大事ですから、手放した方が成長を見込める事業であれば、事業譲渡という方法も検討してみてくださいね。

しかし赤字が大きいと、適正価格で売り出されない恐れも

とはいえ、過去数年間に赤字を出した企業というのは一般的に市場価値が下がりやすいと言われており、相場も安い傾向があります。

昨今ではマッチングサイトも存在しますが、そういった事情があり、適正価格で売り出されることを望む場合はやはり専門的な業者を頼るのがおすすめです。

方法によって違う?会社売却でかかる税金の種類とは

M&Aの方法のひとつとして知られる会社売却。売り手企業にとっては対価をもらえる上、従業員の今後や後継者問題など様々な悩みを解決できる可能性もあるため、前向きに検討している経営者の方もいるのではないでしょうか。

特に昨今では仲介業者が多様化していることもあり、中小企業の間でも一般的となってきました。しかし、ここで注意したいのが「税金」です。会社売却は双方にメリットが存在するので、それが財産と認められれば税金がかかる恐れもあります。

では、一体どのような税金がかかるのでしょうか?代表的な方法別に見て行きましょう。

会社売却における税金は「株式譲渡」か「事業譲渡」かで変わってくる

まず、会社を売却する場合、代表的な方法として「株式譲渡」か「事業譲渡」が挙げられます。正確には事業譲渡は会社を売る行為ではないのですが、状況によってはそちらの方が適している可能性もありますから、どのようなものか覚えておくと良いでしょう。

株式譲渡

株式譲渡は、簡単に言えば「売り手企業が買い手企業に自社の株式を売却し、経営権を引き渡す」行為です。

M&Aの中でも面倒な手続きが少なく、売り手企業側への対価が大きくなる可能性が高いため、特に中小企業間の会社売却においては人気のある方法と言われています。

一般的には株主が変わっただけで会社自体は残せますし、オーナーが株式の大半を保有している場合は双方の合意を取りやすいのも特徴。ただし、逆に上場企業だと株主たちに意見を仰ぐ必要がありますし、手続きも増えがちなので注意しましょう。

事業譲渡

事業譲渡は、会社そのものを売却するのではなく「一部の事業を切り離して売る」方法です。

買い手企業は売り手企業の資産を選りすぐって受け取ることができますし、売り手企業も不採算事業のみを引き渡すことも可能なので、会社自体は続けたいけれど後継者に困っている事業がある、不採算事業を預けて採算が取れる事業だけに集中したい、などの事情がある経営者にはおすすめと言えるでしょう。

ただし、事業譲渡を行うと売り手企業は同一の事業を行うことに制限がかかるとも言われていますから、株式譲渡より手軽だからと安易に決めるのは危険かもしれません。

株式譲渡の場合は「株式を所有するのが個人か法人か」によっても違う

では、会社売却にどのような税金がかかるかを見て行きましょう。まず株式譲渡を選択する場合、税金は株式を保有しているのが個人なのか、それとも法人そのものなのかによって変わってきます。

株式を所有するのが個人の場合

株式を所有するのが個人の場合は、売却金額は基本的に所得(収入)として扱われるので「所得税」と「住民税」がかかるとされています。しかし、所得税は収入に応じて割合が変わってきます。(譲渡所得の場合は一定)算出方法はどうなるのかというと、以下をご覧ください。

  • 譲渡所得=売却価格―(取得費+譲渡費用)
  • 税額=譲渡益×20.315%(所得税15.315%、住民税5%)

株式譲渡の所得税は「譲渡益」として、復興特別所得税を含め15.315%となっています。

所得税=3,800万×15.315%=581万9,700円

住民税=3,800万×5%~190万円

上記2つを足して、払うべき税金は「771万9,700円」となります。個人とはいえ、かなりの金額になりますね。

株式を所有するのが法人の場合

株式を所有するのが法人の場合は、会社の利益と見なされるため「法人税」が課税されることになります。法人税の税率は規模によって異なるものの、大体30~40%程度と考えておくと良いでしょう。

  • 譲渡所得=売却価格―取得価額
  • 税額=譲渡益×法人税率

では、例えば前述した例と同じ金額で計算してみると、法人税は以下のようになります。

法人税=3800万円×30%(と仮定)=1,140万円

このように、個人で株式を所有する場合よりも法人として株式を所有した方が、税金自体は高くなります。しかも、この他に法人事業税や法人住民税なども合わせてかかることがありますから、規模が大きければ大きいほど株式譲渡には慎重になるべきだと言えるでしょう。

事業譲渡の場合は「消費税」もかかる

では、次に事業譲渡のケースを見てみましょう。事業譲渡は法人が行っている事業を譲る、というものなので、まず「法人税」が課されます。そのため、株式を持っているのが経営者であったとしても、個人に対して税金を請求されることはありません。

そして、事業という財産を売った、ということから「消費税」もかかるため、注意が必要です。

例えばその事業の売却益が3,000万円で、法人税が30%かかるとするとそもそも900万円を支払うことになりますが、そこに消費税がプラスされるため、予想以上の税金がかかってしまいますよね。

ただし、消費税は売却益3,000万円に対して10%、ではありません。建物や特許権などの価格を基に算出されますから、帳簿を確認しておきましょう。また、土地や有価証券、貸付金といったものの譲渡に関しては非課税となります。

会社売却の際には、様々な節税対策もある!

このように、会社売却で課される税金は意外と大きなものです。そのため、何か方法があるのであれば、出来る限り節税を行いたいと考えてしまいますよね。

そこで最後に、株式譲渡、事業譲渡それぞれによく用いられる節税対策についてご紹介しましょう。

  1. 株式譲渡は「取得費用」を大きくすることで節税効果が狙える

株式譲渡の場合、ポイントは「取得費用」です。税金は主に収益に対して支払いが求められるので、利益率が下がれば下がるほど税金は低くなります。しかし、例えば仲介業者への支払い額を増やしたところで、自分の得にはなりませんよね。

そこでよく使われる手法が「取得費用を工夫する」というもの。取得費用は売却される株式を取得した際にかかった費用なのですが、法律上その金額がはっきりと分からない場合には一律5%で処理できる、となっています。

例えば売却額が1億円だったとして、実際の取得費が100万円であれば、全体の5%として計上した方が取得費は上がり、税金は下がるというわけです。

  1. 役員退職金を利用する方法も

株式譲渡の場合、買い手企業から売り手企業の株主に対価を支払う際「一部を役員退職金として渡す」という手法もあります。これは一般的に売却額に対する税金よりも退職金に対する税金の方が安いからで、結果的に多くの資金を得ることに繋がるのです。

  1. 事業譲渡の場合、赤字を活用することで節税になる可能性も

事業譲渡は法人税と消費税が両方かかってしまうため、一見株式譲渡よりも税務上は損になるような気がしてしまいますよね。しかし、そもそも事業譲渡は、営業権に相当する金額を5年間で均等償却することができるため、それだけで節税対策になることもあります。

また、現在赤字があるのであれば、譲渡益がそれと同程度になるよう工夫することで、法人税の課税対象から外れるという手段も。会社売却において最も高い税金は法人税ですから、それがかからなくなるというのは大きいのではないでしょうか。

意外と時間がかかる?会社売却の必要手続き

会社売却は、自社の存続や将来性を不安に思う経営者にとってはメリットも大きいM&A。しかし、売り手企業と買い手企業、双方が納得できる結果にたどり着けるまでには、様々な手順を踏まなければなりません。

では、一体どのような手続きが必要なのでしょうか?今回は実際に会社を売却する売り手企業の視点から、手続きのポイントをご紹介しましょう。

準備から締結まで!大まかな手続きの流れを知ろう

会社を売却するためには、まず相手を探さなければなりません。知り合いに紹介してもらう、既に伝手があるという方もいるでしょうが、いずれにしろ専門の部署を持たない企業は仲介会社やアドバイザリーを頼るのが一般的です。

  1. M&Aの仲介会社、アドバイザリーとの契約
    まず、M&Aの仲介会社、あるいはアドバイザリーとの契約を行います。どう違うのか?というと、仲介会社は「双方の合意を目標に公平な立場でサポートする」、アドバイザリーは「売り手企業か買い手企業、依頼された側の立場から利益の向上を目指す」のが特徴です。料金は仲介会社の方がリーズナブルな可能性が高いですが、出来る限り対価を得たいならアドバイザリーの方が適当な場合もあるため、どちらが向いているかよく考えましょう。

  2. 事前調査、及び資料作成
    サポートしてくれる専門家に相談しつつ、事前調査や資料作成を行います。簿外債務をはじめとしたマイナス要素を整理し、客観的な数値から企業価値をしっかりと把握しましょう。また、最終的にどのようなM&Aを目指すか(重視すべきは対価か、従業員の待遇か、事業の発展かなど)も考えておいた方が良いでしょう。

  3. 買い手企業となる候補先から選定、トップ面談
    昨今ではマッチングサイトを使い自力で探す手もありますが、仲介会社やアドバイザリーと契約している場合は基本的に候補先を提案してもらえます。その中から「この会社なら自社を任せられるかもしれない」と期待が持てる企業を厳選し、トップ面談を行うのです。トップ面談は言うなればお見合いのようなもので、双方の条件がかみ合うかを確認します。

  4. 意向証明書の提示(必須ではない)
    買い手企業のトップが改めて売り手企業に魅力を感じた場合「意向証明書」が提出されます。これは言うなれば「前向きに購入を検討する意志がある」という証明のようなもので、買い手企業側が動機や双方が期待できるシナジー(相乗)効果、今後の展望などを記した履歴書、と考えると分かりやすいかもしれません。

  5. 基本合意の締結 ※仲介会社への報酬が発生することも
    売り手企業側も買い手企業側に魅力を感じ、このまま話を進めたいということであれば、次に目指すのが「基本合意の締結」です。これは譲渡価格やスケジュール、監査(デューデリジェンス)の協力業務など様々な合意条件を確認した上で行われます。注意したいのは、ここではまだ契約締結ではないということですが、仲介会社によってはこの時点で中途報酬が発生することもあります。

  6. 買収監査(デューデリジェンス)
    本格的に買収を精査するため、買い手企業が行うのが「買収監査(デューデリジェンス)」です。これは財務、法務、人事、税務など様々な観点から売り手企業側に問題点がないか、M&A後に課題は存在するかなどを確認するもので、弁護士や会計士、経営コンサルタントといった専門家たちに依頼されるのが一般的です。

  7. 最終譲渡契約の締結&クロージング
    買収監査にも問題がなければ、いよいよ最終譲渡契約が締結されます。これについての契約書はそれぞれの企業の責任者が締結し、弁護士をはじめとした専門家による内容チェックが必要です。主な費用が発生するのはこの時で、買い手企業は現金や株式を用意せねばなりません。売り手企業も、仲介会社への成功報酬が必要になるでしょう。

ちなみにクロージングとは、買い手から売り手へ対価を渡した上で、買い手企業へ資産や人材などを移転させる作業。契約の締結だけでなく、具体的な処理を完了することでM&Aは完了したと言えます。

売り手企業が会社売却につまづきがちなポイントは?

このように、会社売却は様々な手順を重ねながら慎重に行われます。しかし、中には上記の手続きの途中でつまづいてしまう経営者もいるようです。一体どのような注意点があるのでしょうか?

仲介会社、アドバイザリーが見つからない

仲介会社やアドバイザリーはたくさん存在しますが、特に大手の仲介会社は大企業向けの案件を中心的に取り扱っています。中小企業向けの仲介会社やアドバイザリーも、最低報酬として一千万円以上を明示してある会社がほとんど。最低でも500万円程度は見ておく必要があるでしょう。

つまり、ある程度の規模の会社でなければ請け負ってくれる仲介会社やアドバイザリーが見つからない恐れがあるのです。昨今では個人事業主でもM&A可能なマッチングサイトも増えていますが、信頼できるアドバイザーに出会えるかが第一のカギだと言えるでしょう。

買い手企業が見つからない

第二に、仲介会社やアドバイザリーが見つかっても買い手企業が見つからない、というパターンもあります。専門家を頼れば候補先を提案してもらえるのでは?と思うでしょうが、相談しても必ず見つかるとは限らないのです。

例えば売上に比べて負債が大きい企業や、現在需要が低迷している事業を取り扱う企業、経営者のスキルや顧客に依存している企業などは買い手がつきにくいと言われています。M&Aの前に、そういった問題があれば改善を目指す必要があるでしょう。

企業価値が意外と低い

仲介会社によっては有料のこともありますが、M&Aの前にやっておくと安心なのが「企業価値評価」です。これは企業の市場価値を客観的に図るもので、会社売却で得られる利益もある程度算出できます。

しかし、これによって思いのほか企業価値が低かった、となってしまうと、未来に期待できなくなることも。帳簿や事業内容を見直し、確固たる強みを見つけることが納得のいくM&Aへのポイントと言えそうです。

取引先や従業員から反発される

これも意外とよく見られるリスクです。会社を売却すれば、経営者以外の役員や従業員なども買い手企業の支配下に置かれることになります。現状の環境が変わることをよく思わない人もいますから、売却への不満から退職者が続出する恐れも。

また、取引先や顧客などが経営者が変わることに不安を覚え、M&Aに苦言を呈することもあるようです。M&Aを行う場合には役員から順に丁寧に説得を行い、取引先や顧客に対しても出来る限りの誠意を見せることが大切と言えるでしょう。

事業譲渡や業務提携など、様々な可能性を模索しよう

このように、M&Aの手続きはスムーズに完了するとは限りません。そのため、一般的には会社を売却しようと考えてから最終的な完了までに2年はかかると見ておくべきだと言われています。

短期間では難しいからこそ、事業譲渡や業務提携など別の方法も模索しつつ、経営者や従業員、買い手企業などが納得できるM&Aを行いたいものですね。

トピック:M&A仲介

更新日:2020-10-16

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中小企業庁の記事によると、経営者が経営を引退してもその事業の継続を希望しているものの、後継者が確保できない企業においては、事業売却による事業承継が、事業継続の方法として考えられている。

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