大企業が海外企業をM&Aする事例が話題!増加しているある背景とは?

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大企業が海外企業をM&Aする事例が話題!
増加している背景とは?

企業の規模にかかわらず、近年話題のビジネススキームが「M&A合併と買収」です。大企業が、巨額の資金を投じて社運をかけたM&Aを行ったという話題が報道されています。もちろん、買収企業側はそれだけの事業価値があると判断しているからこそ、巨額投資をしているのですが、傍からみていると海外企業だと特に知名度もなく、本当にそこまでのメリットがあるのかと疑問に感じてしまう方もいるかもしれません。

今回は、日本企業による大規模なM&A事例をご紹介しながら、イノベーションが起き続けるグローバル展開について、M&Aを成功させるポイントとともに考えていこうと思います。

大手企業が巨額を投資して企業買収を行ったと話題

日本の大企業が海外の企業に対してM&Aをしかけた例として、武田薬品の事例を紹介します。同社は、2018年5月にアイルランド国内製薬大手の「シャイアー」を約6.8兆円で買収し、日本国内のみならずヨーロッパでも話題となりました。

7兆円近い資金の投資ですから、いかに大企業でもかなりの決断だと感じられますが、武田薬品自体の時価総額が3.3兆円と聞くとより驚きは大きくなるかもしれません。買収にかかる費用は、4兆円の増資と3兆円程度の借入を行ってのもの。まさに崖っぷちの資金繰りでの買収だったわけです。

武田薬品は、なぜそこまでの無理をしてまで高額の投資を断行し、外資系企業を買収したのでしょうか?武田薬品が空前の規模をもってM&Aを実施したメリット・想定しているリターンは大きく分けて2つあります。

事業内容がグローバル化できる

海外の企業を買収することはそのまま販路の拡大につながります。特に、医療・薬品分野の場合はシェアも含めて顕著。世界的な販売戦略を促進するのが武田薬品のひとつ目の狙いです。

また、シャイアーの開発した治療薬には希少疾患に狙いを定めたものも多く、競合性が低いことから高収益も望みやすいのが特徴です。例えば、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)や潰瘍性大腸炎などの治療薬、ライソゾーム病などの遺伝子疾患治療薬(現在のところは開発中です。)など、これらの治療薬は、競合が少ないか皆無のため、高収益が見込めます。

そしてこの買収による連結売上高は、3兆5000億円となります。この結果、世界ランキング8位の製薬会社となる見込みだと話題となりました。巨額の投資をしても充分なリターンを得られるという判断に繋がりますから、M&Aに踏み切った理由も納得できます。

投資家にとってはハイリターンが見込める

武田薬品工業は、増資にあたり新たな株式を発行する必要がありました。そこで重要だったのが「株主」の存在です。ここで、少し補足をしたいのですが、「事業」というのは、「会社」のものです。

「株式会社」というのは、「株主」のものですから新しく資金を使って、会社を買収するために株式発行をするときは、株主総会を開いて、「株主」に承認してもらわなければなりません。

今回のM&Aにあたっては、古くからの創業者、OBからは反対意見が多かったのですが、機関株主からは、企業の成長が見込めることから前向き意見も出ている状況でした。さらに、増資・企業買収に伴い配当金が1株当たりの180円に増額するという会社側の説明を受け大多数の賛成を獲得。見事に資金調達を成功させました。

今後の日本経済発展のカギは外資とのM&Aになるのか?!

こうした海外企業の買収は、取り上げた武田薬品だけではなく、業種を問わず盛んに行われるようになっています。この背景には、日本国内間の企業だけの連携では大きな成長が見込めないことが一因です。

特に日本の製薬業界は、難解な薬事制度を理由に、なかなか外資系製薬会社開発の治療薬の導入が進んでいませんでしたので、グローバル化が早急に必要だった業界でもあります。昨今では、日本でも海外データの活用が進み、政府が国際共同治験の推進を掲げるなど、規制環境の大幅な改善が見られるようになりました。この潮流を踏まえても、今回のM&Aは大きな一歩といえるでしょう。

世界でも屈指の事業規模を目指す大企業にとって、大規模な企業買収は投資資金こそ必要ですが、大きなリターンも見込める外国企業も視野に捉えるべき時代となりました。今後、M&Aのビジネススキームは、企業の大小にかかわらずすべての経営者が考えておくべき選択肢のひとつとなっていくでしょう。

更新日:2019-10-27

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