元弁護士のライターとして、弁護士経験を活かし記事執筆に従事しています。(現在、弁護士会への登録を行っていないため「元」弁護士となります)
平成16年10月に弁護士登録。平成19年4月に法律事務所を開設。平成24年に体調不良により事務所を閉鎖。以後、法律ライターとして活動。
日本では、アメリカなどの諸外国と比べるとM&Aが積極的に活用されていないイメージがあるかもしれません。しかし実際には、最近の日本企業は海外企業の買収へと熱い視線を向けています。
今回は、国内で積極的にM&A助言業務を行っている金融機関担当者の意見をもとに、日本企業のM&Aに対する姿勢や今後の日本におけるM&A市場の展望について考えてみたいと思います。
先日、2019年1~6月における国内企業へのM&A助言業務のランキングが発表されました。日経新聞によると、首位は前回と変わらず三菱UFJモルガン・スタンレー証券で野村証券が2位に急浮上したとのこと。みずほフィナンシャルグループが4位に入っています。
2019年上半期に実行されたM&Aの評価額は約8兆6000億円。日本ペイントホールディングスがオーストラリアの塗料最大手であるデュラックスグループを買収するなど、日本企業が海外企業を積極的に買収していることが影響し、高水準となっています。
実は2018年の同期と比べると7割減少していますが、これは、2018年には武田薬品工業とシャイアーの超大型案件という特別な事情があったことが影響しています。2016年や2017年と比較すると、2019年は依然として高水準です。
今後、日本企業のM&A市場はどのようになっていくのでしょうか?
野村證券やモルガン・スタンレー証券など、各金融機関担当者の意見や指摘が紹介されていたので、ご紹介します。
上記の日本ペイントによる買収にかかわった野村證券の角田慎介氏は、「製造業などは構造変化が大きく、M&Aの必要に迫られている」と言います。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の別所賢作氏は、「日本企業が資本の使い途を自問自答しており、その方向性としてM&Aに積極的に取り組む姿勢を見せている」と分析しています。
JPモルガン証券の土居浩一郎氏は「物言う株主」による影響を指摘しています。そもそもM&Aは株主の発案や後押しによって行われる例も多いことから、株主の発言を企業が真剣に受け止めるようになったことで、さらにM&Aが加速していくだろうといいます。
ゴールドマンサックスの担当者からは「企業において業務効率の改善には自ずと限界がある。今後は事業売却などを含めた資本効率の向上こそが、日本企業が生き残るための道である」と指摘されています。
リフィニティブが国際M&Aにおいて買収側になった企業のランキングを発表していますが、日本は世界第3位です(1位は米国、2位がフランス)。2018年には上述の武田による買収があったため2位となっており、そこからは順位を落としていますが、その前の2017年には6位だったので、より積極的になってきていると評価して良いでしょう。
以上の各金融機関担当者の意見からは、日本企業は海外企業の買収に積極的である実情が見えてきます。またM&Aは国内企業の抱える問題を解決する糸口にもなりそうです。
今後のM&A市場の活況化に期待していきましょう。
更新日:2020-01-28