山口FGが事業承継支援サービスを始!地方企業に後継者候補をマッチング

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山口FGが事業承継支援サービスを始!地方企業に後継者候補をマッチング

福谷陽子
法律ライター 福谷 陽子
監修者

元弁護士のライターとして、弁護士経験を活かし記事執筆に従事しています。(現在、弁護士会への登録を行っていないため「元」弁護士となります)

平成16年10月に弁護士登録。平成19年4月に法律事務所を開設。平成24年に体調不良により事務所を閉鎖。以後、法律ライターとして活動。

山口FGが事業承継支援サービスを始!地方企業に後継者候補をマッチング

山口県から、M&Aに関するホットなトピックが届きました。中国地方を中心に展開する「山口フィナンシャルグループ(FG)」が、後継者不足に悩む地元中小企業向けに、事業承継のサポートを開始するとのこと。企業と経営者候補となる若手人材を結びつける「サーチファンド」というマッチングサービスです。

今回は、山口FGが行おうとしている事業承継支援のサービス概要をご紹介していきます。

1.サーチファンドとは

山口FGが実施しようとしている「サーチファンド」は、後継者に悩む地方の優良企業に後継者候補の若者をマッチングするものです。山口FG傘下の地方銀行3行などが約10億円の資金をつぎ込み、以下のような事業を行います。

1-1.サーチファンドの仕組み

サーチファンドでは、まずはファンドが経営学博士号(MBA)を取得済みなどの優秀な若手経営者を選抜し、「SPC」という特別目的会社のトップの地位に就かせます。

SPCトップとなった経営者候補は自ら承継したい地元企業を探し、内情の調査等を行います。承継を希望する場合、対象企業と交渉をおこない、その株式を買い取って自社SPCの傘下に置きます。その後は経営者候補が親会社であるSPCから子会社となった対象企業へ入り、実際の経営を行っていく仕組みです。

山口FGなどの出資者は、対象企業の調査にかかる費用や株式買収費用、買収後の資金調達などの形で後継者候補を支援します。

1-2.今後の予定など

サーチファンドはこれから後継者候補の能力審査やマッチングを本格的に行い、2020年3月までには1件目の案件成立を目指します。
2019年8月30日現在、既にサーチファンド第1号が立ち上がっており、9月中にはさらに2社が立ち上がる見込みであるとのことです。

2.通常のM&Aと異なるサーチファンドの強み

サーチファンドには、通常のM&Aにはない以下のような強みがあると考えられます。

2-1.確実に地元に企業を残せる

一般のM&Aを利用して事業承継をすると、中国地方から引き上げられて外部へ事業展開され、資本が県外へ流出する可能性があります。この点、山口FGが育てた後継者によるサーチファンドであれば、資本が地域外へ流れる可能性がありません。

###2-2.有能な若手人材を探しやすい
一般のM&Aを利用する場合、売り手企業は手探りの状態で買い手企業を探さねばなりません。M&A仲介会社から開示された限られた資料と、相手経営者とトップ面談をしたときの印象、相手企業の簡単な概略などの情報のみから「後継者として適切と言えるのか」という重要事項を判断する必要があります。

相手がどういった人物か、詳細はわからないまま決めなければならないため、M&Aの利用を躊躇してしまう企業も多数存在します。

サーチファンドの場合、あらかじめ山口FGらが能力審査を行い「お墨付き」を与えています。承継者を探す企業にとって大きな安心材料となるでしょう。

2-3.地方企業の更なる発展の可能性

優秀な若手が地方老舗企業の経営を引き継ぐことにより、これまでの昔ながらの経営では成し遂げられなかった海外展開やIT技術の活用などにもチャレンジし、地方企業が飛躍していける可能性もあります。

山口県や広島県では、後継者不足が深刻化しているため、サーチファンドの事業モデルが成功すればその意義は大きいと言えます。実際、19年版の中小企業白書でも紹介されるなど、サーチファンドの取り組みは注目を集めています。今後の展開から目を離せませんね!

更新日:2020-02-18

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