会社売却のメリット・デメリットは?

目次

会社売却のメリット・デメリットは?

ここでは、会社売却についてメリット・デメリットを説明します。

会社売却とは

そもそも会社を売却するという行為には、どのような意味があるのでしょうか? 会社売却とは、文字通り、その会社が保有している資産や権利を含めた、さまざまな契約などの権利を買収先の企業などに売却する行為のことです。その中には、株式、それまでの取引先、そして従業員の雇用契約なども含まれます。

また、その企業のブランドイメージも対価を受ける代わりに譲渡することになります。事情を知らない人間からすると、経営者が泣く泣く判子を押すだけのマイナスイメージしか思い浮かびませんが、じつは近年、この会社売却を行う企業が急増しており、そこには、経営者だけにしかわからない事情があります。そして一方で、事業を拡大するための方法のひとつとして、M&Aという選択を企業も増えているのです。

会社売却を行うメリットとデメリットは?

会社売却のメリット

会社を売却することによって得られる最大のメリットが「後継者問題の解決」です。これは経営者に必ず立ちふさがる重大な問題のひとつ。

いかに優れた経営者であっても、後継者がいなければ、引退後も事業を継続することができません。会社を売却することで経営陣を一新して、後世に企業を残していけることが、会社売却で得られる大きなメリットではないでしょうか。

また、新たな経営者を残せることで、それまで働いていた従業員の雇用も安定化することができ、さらにそれまで不要だとされていた事業も一緒に売却することも可能です。

以上、後継者問題の解決や従業員の雇用安定などが会社売却の主なメリットですが、より具体的に見てみれば、たとえば以下のように、他にもいくつかのメリットを挙げることができます。
会社売却を検討している方は、売却によって生まれるメリットについて、以下に沿って一つ一つしっかりとイメージしてみてください。

大きな利益を得られる可能性がある

会社を売却することで、経営者は想定以上の莫大な利益を得られる可能性があります。
会社を売却する際の値段は、単純に現状の資産価値を足し算しただけのものではありません。将来会社に入り得るキャッシュフローも考慮し、会社の値段が決まります。営業権の価値分も上乗せすれば、会社の値段は「経常利益の3~5年分」が目安となるでしょう(業種等の条件により異なります)。たとえば、かりに「年商が1億円で、売上の5%が経常利益」という会社の場合、会社の値段は次のような目安になるかもしれません。

1億円×5%×3~5年=1500~2500万円

この計算式で年商5億円の会社の値段を計算すれば、7500~1億2500万円。莫大な値段が付く可能性があります。資本金300万円や1000万円で創業した会社であれば、売却する側の社長としても感無量でしょう。
ちなみに、株式譲渡によって会社を売却した場合の税率は、所得税と住民税を合わせて20%。1億円の売却益に対して8000万円の手取りです。十分なリターンと考えて良いでしょう。

会社経営の重圧から解放される

創業から何年、何十年と、経営地盤の拡大や従業員のマネジメント、資金繰りなど、さまざまな苦難の中で心身ともに休まる瞬間がなかった経営者。会社を売却することで、これまで自分が背負ってきた会社経営の重圧から解放されます。
解放された瞬間は、ともすると強い寂しさを感じるかもしれません。それもそのはず、今までの多忙な毎日から日常の景色が一変するからです。

しかしながら、会社売却によってプライベートな時間を多く持つことができるようになることも事実。仕事一辺倒だったこれまでとは異なり、家族でゆっくりと旅行を楽しむなどすれば、新たな時間の過ごし方、人生の楽しみ方を実感できるようになるはずです。

なお、会社を売却するということは、その会社の経営のために社長個人が借りていた融資や個人保証・連帯保証なども、すべて込みで売却するということ。これらお金の縛りからも解放されることで、経営者は以前よりも心が軽やかになることでしょう。

経営効率化を図ることができる

会社売却という言葉は、何も「会社のすべてを売却すること」のみを定義しているわけではありません。「会社の一部を売却すること」も、立派な会社売却の一部です。

たとえば、本来は土木建築業を営んでいる会社が、多角化経営の一環として、地域に飲食店を経営していたと仮定しましょう。ところが本業とは異なる飲食業分野だからこそ、なかなかうまく採算が取れないという事態が出てくるかもしれません。そのような中で、その飲食店の営業を続けていくことは会社にとってリスクであり、ともすると本業である土木建築業を圧迫する懸念すら生じます。

このような事態においては、改めて採算性の良い本業に専念すべく、多角化経営部門を他社へ売却する経営戦略も検討されることでしょう。いわゆる「経営のスリム化」「経営効率化」です。ビジネス用語では「集中と選択」などという言葉とともに語られることもあります。

限られた経営資源を、自社が強みとするコア部門に集中させることができること。これは、会社売却によって得られる大きなメリットの一つとされています。

買い手企業との相乗効果を期待できる

人の営みと同様に、企業にもライフサイクルがあるとされています。会社経営者ならば一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、かの「創業期、成長期、成熟期、衰退期」の4つのサイクルです(それぞれのステージの呼び名は、テキストによって異なります)。

このライフサイクルがすべての企業に共通するもとと仮定すれば、100年、200年と続く老舗の安定企業が存続している現状を説明することができません。しかし、企業にライフサイクルがあることは確か。ではなぜ、老舗の安定企業はライフサイクルと無縁のように存続しているのでしょうか?

その大きな理由の一つが、技術革新や他社との協力における相乗効果を通じ、企業に衰退期を呼びこまないこと。たとえば、いかに自社の強みだけに資源を集中投資しようとも業績が頭打ちになってしまったとき、別の強みを持つ他社に自社を売却することにより、双方の強みをハイブリッドさせた次なるステージを生み出すことで、両企業に衰退期を呼びこまない、とする経営戦略です。

経営文化の異なる2社が合併したとき、企業には、経営者にも想像ができないような巨大な成長が訪れることがあります。

経営者としての能力を評価される

社会にとって意味のない会社は、創業しても早々に市場で淘汰されます。逆に言えば、長く存続してきた会社は、社会にとって存在意義のある会社。社会にとって存在意義のある会社は、たとえ創業者がリタイアすると決めたとしても、社会には残り続けるべきです。社会にとって有益な事業を残す社長と、逆に潰す(廃業する)社長とでは、前者のほうが経営者として高く評価されることは言うまでもありません。

たとえばマイクロソフト社の創業者はビルゲイツ氏。2020年4月現在、同氏はすでに代表の座を降り、プライベートで目標としてきた課題に多くの時間を費やしています。

ここで想像をして欲しいのですが、かりに同氏が代表の座を降りる際、同時にマイクロソフト社を廃業すると決めたら、世の中はどれほど多くの混乱と失望に満ちたことでしょう?会社を残してリタイアしたからこそ、ビルゲイツ氏は、社会から経営者としての能力を評価されているのです。

マイクロソフト社を例に挙げるのは極端かも知れませんが、大なり小なり、地域社会でも同じ状況になるおとを忘れてはいけません。何年も地域で存続してきた会社は、地域が共有する宝でもあります。創業者の一存で廃業させるべきではありません。会社売却を通じて地域の会社を残すことで、創業者は経営者としての能力を評価されることでしょう。

廃業コストを抑えられる

業種等にもよりますが、会社を廃業する際に莫大なコストがかかることがあります。
たとえば、工場を始め多くの有形資産を持つ会社であれば、廃業にともなうコストは甚大になるでしょう。あるいは、有形資産の少ない会社であっても、従業員への退職金や補償などを考えれば、社長の手元にはほとんど資産が残らないかもしれません。経営者の中には「廃業コストを抑えるために会社売却を決断した」という人もいるほどです。
会社売却をすれば、コストとは真逆に、リターンを得られる可能性が大です。廃業よりも売却を検討する経営者が増えてきていることは、至極当然のことと考えるべきでしょう。

以上、会社売却から得られるメリットを詳しく確認してみました。
会社売却には様々なメリットがありますが、それらの中でも最大のメリットが後継者問題の解消です。「自分がリタイアしても会社だけは存続させたい」と願う経営者が多い中、ご家族や従業員の中に、会社を継げる人材が不在の場合もあるでしょう。そうなると、必然的に選択肢は2つ。廃業か会社売却です。

廃業よりもメリットの多い会社売却を選択することは、経営者にとって当然の発想かもしれません。

会社売却のデメリット

反対にデメリットもしっかりと把握しておかなければ、逆にその後の事業に支障を生じさせることにもつながります。売却することによって起こりうるマイナス面としては、やはり「経営権を喪失してしまう」こと。会社を引き継いだ買収企業が行う経営には、口を出すことができなくなります。

また、雇用や労働条件の変更によって従業員に不満が出てしまうケースも考えられるでしょう。そして、それまで地域密着型の経営を行ってきた会社であれば、場合によっては会社を売却したことにより、取引先との関係がこじれてしまうことも考慮に入れておかなければなりません。

ミレニアル起業家たちが会社売却をする理由

ミレニアル世代に増えている起業家「連続起業家」とは

連続起業家とは英語で「serial entrepreneur」と書きます。簡単にいえばベンチャー企業をいくつも次々と立ち上げる起業家のことで、ひとつの事業を一旦軌道に乗せると、その事業からは一旦手を引き(完全に手を引く場合もあり)、また別のベンチャー企業を立ち上げるということを繰り返します。株式の公開や後継者に経営を引き継いで、別の企業を立ち上げるといったケースが多く、さまざまな事業に対応できる柔軟性やアイデア、実行力や人脈、そして経営手腕といった要素が必要になってきます。

連続起業家がM&Aエグジットに至る理由

連続起業家は、エグジッドを前提に企業を立ち上げます。エグジッドとは、ベンチャー企業を立ち上げてある程度成長させたら、新規株式公開(IPO)もしくはM&A(合併&回収)を機に、その会社を売却(バイアウト)した資金、そしてそれまでに得た経験や人脈、情報を元にまた新たな会社を創業するのです。この資金回収のことをエグジッドといい、M&Aによって資金を得ることをM&Aエグジッドといいます。

M&Aエグジッドにもっとも積極的なのは2000年以降に創業者になったミレニアル世代だといわれています。「会社を続けて作り上げては売却して利益を獲得して、資金を豊富にすることで、余裕のある生活を送り続けることができる」といった理由で、M&Aエグジットの連続起業家に転身する経営者も多いようです。日本では、比較的M&AよりもIPOをエグジット戦略として活用することが多いですが、ミレニアル世代の起業家たちはM&Aエグジットを使うことが多いようです。

確かに、ベンチャー企業のメッカとしても知られるアメリカでは、IPOはあまり好まれず、機動力に優れて、手堅いM&Aがスタンダード。ミレニアル世代はそうしたことも勉強しながら、これまでの日本の基準に縛られず、積極的にM&Aエグジットを取り入れた世代でもあるといえるでしょう。

まとめ

正直にいってベンチャー企業の先進国であるアメリカに比べて、日本は未だ後進国であることは否定できません。第一世代といわれる起業家が、未だに第一線で活躍しているのが何よりの証拠です。ですが、そこに現れたのが、日本のスタンダードであるIPOよりもM&Aを積極的に取り入れてきたミレニアル世代の連続起業家です。彼らが積極的に活躍して、エンジェル投資家として企業を活性化してくれれば、閉塞した日本の経済に光を当てることができるかもしれません。

更新日:2020-04-27

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