元弁護士のライターとして、弁護士経験を活かし記事執筆に従事しています。(現在、弁護士会への登録を行っていないため「元」弁護士となります)
平成16年10月に弁護士登録。平成19年4月に法律事務所を開設。平成24年に体調不良により事務所を閉鎖。以後、法律ライターとして活動。
先日、M&A仲介サービス大手の「ストライク社」が、自社の運営するサイト上に、M&Aを希望する企業の情報を集約するサービスを開始すると発表しました。
今、日本では中小企業のM&Aが過熱しておりM&A仲介会社も数を増やしていますが、案件は各社が個別に管理している状態で、ユーザーがさまざまな案件を網羅的に確認する方法がありません。
今回、ストライク社がそうした情報を1つにまとめることで、M&Aを希望する企業がマッチング相手を非常に探しやすくなる可能性があります。
今回は、ストライク社が始めようとしているM&A案件情報集約サイトの概要をお伝えいたします。
ストライク社は、大手のM&A仲介サービス会社です。
同社は今後、同業他社が持つ売却希望企業情報をとりまとめ、現在ストライク社が管理しているサイト上に集約すると発表しました。その狙いは、M&Aで売却を希望する企業と買収を希望する企業の効率的なマッチングです。
サイト上には、各M&A仲介会社の抱える案件が、企業名を匿名にした状態で公開されます。サービス名は「M&A online Market」です。
これまで、自社が保有しているM&A希望企業情報を公開しているサイトは多数ありましたが、「さまざまなM&A仲介業者の持つ情報」を集約し、「会社」という範囲を超えて発表するサービスは今回のストライク社のものが初めてです。
当初は約30社のM&A仲介会社がサイトに参加して、合計100件程度の売却希望企業情報を掲載するところから始めます。今後5年以内に売却希望企業情報1,000件の集約を目指します。
今回ストライク社が始めた「M&A online Market」、一見するとこれまでにも存在したM&Aのマッチングサイトと変わらないように思えます。
しかし、このサービスと既存のサービスには根本的な違いがあります。それは「複数のM&A仲介会社」の抱える案件が登録されることです。
従来は、自社の抱える案件を公表するサイトは多数あっても、さまざまなM&A仲介会社の抱える案件を横断的に集めたサイトはありませんでした。M&A仲介会社同士はいわば「ライバル」であり、案件を取り合う立場です。そうした会社同士が情報を提供し合うことは考えにくい状況だったといえるでしょう。
ところが今回ストライク社はそういったこだわりを捨て、同業他社とも協力してさらなるM&A市場の拡大を目指します。
ユーザーにとっては多数の情報が網羅されている方が使いやすいのは間違いないので、ストライク社の考え方はより「ユーザー視点」に近づくものともいえそうです。
「自社が抱えている情報を他社と共有してしまうことは、M&A仲介会社にとって不利益になるのではないか?」とも思えます。M&A仲介会社にとって新サービスにメリットはあるのでしょうか?
確かに情報を共有してしまうと他社から妨害などを受ける可能性がないとはいえません。
しかし、情報共有サイトに公開することで、顧客により多種多様な買い手企業を紹介できます。買い手企業探しが楽になればその分成約もしやすくなり、情報を提供する仲介業者側にもメリットが生まれます。
このように、M&A企業情報についてM&A仲介会社の枠を超えて横断的なサイトが生まれたのは、国内のM&A市場がそれなりに成熟してきたからと考えられます。
市場として大きくなってきたからこそ、個別の会社が情報を抱え込んでいる閉鎖的な状況に不都合が生じ、今回のような解放されたサービスが自然と要求されたのでしょう。
今後のM&A online Marketの発展次第では、同様のサービスが他にも現れて M&Aがさらに活性化していく可能性があります。
更新日:2020-02-27