会社売却のその後はどうなるの?

会社売却のその後はどうなるの?社長は悠々自適?

目次

会社売却のその後はどうなるの?社長は悠々自適?

公認会計士 安田亮
監修者 公認会計士 安田亮

京都大学3年在学中に公認会計士試験に合格し、大手監査法人、東証一部上場企業での勤務を経て2018年9月に独立開業。企業会計の実務に精通しており、組織再編等の会計・税務処理の経験も豊富。

会社売却をして後継者問題を解消したその後、元・社長はどのような生活を送っているのでしょう?
会社売却には、多大なエネルギーが要ります。だからこそ、会社を売却する時点では、まだまだ心身ともに健康な社長が多いはず。まだまだ長い第二の人生を、元・社長たちはどのように過ごしているのでしょう?
ここでは、M&Aによって会社を売却した後の社長の人生について、事例を交えながらご紹介します。

元・社長は会社の売却金をどのように使っているのか?

会社売却をすれば、一般的には元・社長の手元に大きなお金が舞い込みます。このお金との向き合い方こそ、いわば会社売却後の元・社長の人生そのものと言うことができるかもしれません。以下、会社の売却金の使い方について、主なパターンを見てみましょう。

老後の生活費として堅実に使う

高齢、または年齢にともなう体力の低下を理由に会社売却を決意したオーナーの中には、売却金を老後の生活費に充てて少しずつ消費していく、という人も少なくありません。
なお組織形態が自営業(個人事業主)である場合、国民年金以外の老後資金をほとんど用意していない例も少なくありません。その場合、事業の売却金を老後生活費に回すことは、むしろ一般的です。

第二の人生のために大胆に使う

年金や預貯金が十分にある人の中には、会社売却金を第二の人生のために大胆に使う人も少なくありません。若いころから実現したい夢があったにも関わらず、会社経営で忙しくて実現できなかった、というオーナー社長に多いパターンです。
よく見られる例としては、大学に進学して学んだり、大学院に進学して研究者の道を模索したり、海外に留学して学んだり…等々。陶芸や絵画など、芸術方面への造詣を深める人も少なくありません。

貯蓄する

当面、会社の売却金を使う予定がないという人は、多くの場合、お金を貯蓄に回すことになります。
若くして会社売却をしたオーナー社長などは、将来の再度の事業展開のために貯蓄をしたり、または、長い老後生活に向けた生活費のために貯蓄をしたりすることがあるようです。

投資する

会社売却によって得た資金の多くを、株式や不動産、投資信託、外債などの投資に回す人も少なくありません。
これらは値下がりする可能性もある投資商品ですが、長くオーナー社長を経験してきたからこそ、モノの価値が固定ではないことを体で知っています。よって、日々の値動きに対する耐性は、一般人の数倍も数十倍もあるでしょう。
小料理店や蕎麦屋などの小さな店舗の開業資金にする人もいるようです。これも投資の一種でしょう。

生活全般をグレードアップさせる

会社の売却金を特に何かに使うというわけではなく、広く生活全般をグレードアップさせる、という人も少なくありません。時計や靴、スーツなどをワンランク上のブランドに変えてみたり、旅行の宿のグレードを上げてみたり、などです。今まで頑張ってきた自分へのご褒美、という位置づけでもあるでしょう。

【事例紹介】会社売却のその後

会社の売却金の主な使い方について、上で5種類のパターンを見てみました。さて以下では、実際に会社売却をした社長のその後について、具体的な事例を見てみましょう。何らかの立場で会社に残る人もいれば、完全に会社を退いてしまう人もいます。

売却後に顧問として2年勤めたのちに退職

経営不振を主な理由に、自身が経営するA社を売却したオーナー。会社売却の契約を結ぶ際、「業務が完全に引き継がれるまでの2年間、顧問として会社に残って欲しい」と買収側から伝えられました。
買収側の要望通り、顧問という形で会社に残ったオーナー。約束だった2年の期間を経て、無事、会社を退職しました。
2年間の在職中、決して厚遇されていたわけではありませんが、会社への恩返しとばかりにオーナーは頑張りました。今では、年金に加えて会社売却金を少しずつ崩しながら、ご夫婦で余裕のある老後を過ごしているとのことです。

債務を全額返済して次なる事業を目論む

もともとは自己資金を元手に、小さな美容エステサロンを営んでいたオーナー。経営が順調だったこともあり、その後、融資を受けて好条件のエリアに次々とサロンをオープンしていきました。
ところがオーナーの目論見に反し、会社全体としての売上は伸び悩み。債務超過の状態の中で、オーナーは、不動産も含めた全事業の売却を行いました。
売却から得られた資金を使い、超過していた債務を全額返済。現在は、次なる事業の展開を虎視眈々と狙っています。

買収側企業の技術責任者に就任

オーナー社長でありながら、もともとは技術畑の出身者として、様々なノウハウやアイディアを持っていたB氏。後継者問題や融資問題などではなく、自分がやりたい技術系部門の仕事に集中したいとの思いから、自社の売却を実行しました。
売却後のB氏は、そのまま自社の代表取締役を務めつつ、買収側企業の取締役兼技術責任者に就任。これにより、これまでみずからの技術仕事を妨げてきた資金繰りや連帯保証人などの業務から解放され、希望していた研究開発の仕事に集中できる環境が整いました。

不安や重圧から解放されて穏やかな老後に

高齢かつ後継者不在を理由に、会社売却を検討していたC社。幸い、買収希望の企業が見つかりデューデリジェンスを実施したところ、希望よりも大幅に下回る売却金額が計算されました。
この金額に対してオーナー社長はしばらく悩みましたが、最終的には売却にGOサイン。M&Aは無事に成立しました。
売却金額に大いなる不満を持っているかと思いきや、逆にオーナーは晴れ晴れとした表情でした。その理由は、この売却によって個人保証や自宅の担保提供が外れたこと。加えて、もしもの時に様々な重荷を子孫に残すリスクから解放されたことでした。
精神的な不安感や重圧から解放され、今は穏やかな老後生活を送っているとのことです。

買収側の企業の最前線で活躍する元オーナー

先代の急逝により、急きょ、事業(ドラッグストア)を引き継ぐこととなったD氏。チェーン展開する大手ドラッグストアを前に、まだ20代の2代目社長は、単独での生き残りは困難と判断しました。
そこで大手ドラッグストアに対し、自社の譲渡を提案。拡大路線を歩む同ドラッグストアの方針にも合致し、円満にM&Aが成立しました。
現在、譲渡した側の元オーナーD氏は、当時の従業員たちとともに新規事業開拓の最前線で活躍しているとのことです。

まとめ

以上、会社売却後の社長のその後について、いくつかのパターンと事例を具体的に確認しました。

会社売却後の元・社長に、「こう生きていくべき」という決まりはありません。売却金との向き合い方についても、人それぞれの価値観・人生観をベースに自由に考えてください。残りの人生を後悔しないよう過ごすことこそ、何より大切なことです。

トピック:M&A仲介

更新日:2020-10-16

この記事のURLをコピーする