新型コロナウイルスの感染拡大でも、買い手は自らのM&Aへのマイナスの影響は小さいと考えているが、売り手は大きいと感じている。
M&A仲介大手のストライクが6月に実施したアンケート調査で、コロナ禍での売り手、買い手の意識格差が浮き彫りになった。
地方自治体による自粛要請を受けた経済停滞の悪影響を売り手企業がもろに受けた格好だ。
一方で買い手は売り手に比べて事業規模が大きく、財務基盤が強いことが多いため、コロナ禍でもM&Aを積極的に進めるとした企業が目立った。
コロナ禍による企業業績や経営への影響が注目される中、ストライクは6月3~5日の間、インターネットを通じてアンケート調査を実施した。経営者が対象で、有効回答数は311人だった。
調査によると、買い手企業が、コロナ禍によるM&Aへの「マイナスの影響はない」(52%)「プラスの影響がある」(14%)と回答した比率は合わせて7割近くにのぼった。
「マイナスの影響がある」との答えは33%にとどまった。しかし、売り手企業では「マイナスの影響がある」と回答した企業は全体の58%に達した。
「影響はない」とした企業は25%、「プラスの影響がある」は16%にすぎなかった。
なぜ買い手企業の経営者の多くが、コロナ禍でもM&Aに積極的なのだろうか。
「影響はない」とした買い手企業の経営者の72%が「コロナ禍が経営にそれほど影響がなかったため」と回答した。
18%は「コロナ禍は経営に影響しているが、M&Aは必要と考えているため」と答えた。買い手企業の多くが体力のある大企業とみられ、企業買収を中期的な経営戦略の一環ととらえて、逆風下でも積極的に推進しているようだ。
売り手企業が「マイナスの影響がある」と答えた理由では、52%が「売り上げが減少し、将来に不安を感じた」とした。
19%は「売り上げが減少し、事業を継続できなくなった」としている。
いずれも、コロナ禍による業績の悪化が、M&Aに悪影響を及ぼした背景になっている。
「オンライン化などのビジネス環境の変化により将来不安を感じた」との回答も9%に達した。
コロナ禍でも買い手企業はM&Aに積極的だ。
すべての買い手企業が、計画を延期しても「M&Aを再検討する」と回答した。
再検討する時期も87%以上が「半年以内」とした。「3か月以内に再検討する」とした買い手企業は5割に達しており、迅速に業容を拡大したい方針が垣間見える。
一方で計画が延期になった場合に「M&Aを再検討する」と答えた売り手企業は66%にとどまった。
「半年以内に再検討する」と答えたのは2割、「3か月以内」としたのは6%に過ぎなかった。
「再検討するのは1年以上経過してから」と回答した売り手企業は33%にのぼった。
売上高の減少や将来不安などが、買い手、売り手双方の経営者の心理や行動に影を落としている
新型コロナウイルスの感染拡大が、事業承継やM&Aの延期などの悪影響を及ぼすと考える経営者が5割超にのぼることが、M&A仲介大手のストライクの調査でわかった。
経済停滞による売上高の減少や将来不安などが、買い手、売り手双方の経営者の心理や行動に影を落としている。
ただ「中期的に事業承継やM&Aを再検討する」と答える経営者は7割近くにのぼっており、アフターコロナの世界では企業の合併や買収が再び盛んになりそうだ。
コロナ禍による企業業績や経営への影響が注目される中、ストライクは6月3~5日の間、インターネットを通じてアンケート調査を実施した。
経営者が対象で、有効回答数は311人だった。
調査によると、「事業承継に影響がある」と答えた経営者は58%にのぼった。
M&Aについても、売り手側で58%、買い手側で33%の経営者が「マイナスの影響がある」と回答した。
実際に「コロナ禍のために内容を再検討することになった」経営者は、事業承継で43%、M&Aの買い手で40%、売り手で26%に達した。「計画そのものを取りやめた」経営者も事業承継で9%、M&Aの買い手で10%、売り手で26%いた。
内容を再検討したり、計画を延期したりした理由で最も多かったのは、事業承継やM&Aの売り手側企業では「売り上げが減少し、将来に不安を感じたため」。
事業承継では70%、M&Aの売り手では52%の経営者がこの理由をあげた。M&Aの買い手側の経営者が最も多くあげたのは「手元資金を潤沢にしておくため」(66%)だった。
もっとも、事業承継やM&Aの計画を延期したほとんどの経営者は、中期的には事業承継やM&Aを検討すると回答している。
事業承継では60%、M&Aの買い手は100%、売り手は66%が検討するという。再検討する時期に関しては、事業承継は「1年以上後」が43%と最も多かった。
一方でM&Aの売り手は「1年後」(46%)、買い手は半年後(37%)が最多だった。
トピック:M&A
更新日:2020-09-24