2020年1~6月(上期)のM&A件数は前年同期を11件上回る406件だった。 4年連続で増加し、上期として2009年(439件)以来11年ぶりの高水準。
新型コロナウイルス感染拡大にもかかわらず、件数は増勢を維持した。 日銀による金融緩和や資金供給策を受けて、企業の資金調達環境が改善していることが背景にある。
一方で、上期の取引金額は1兆4671億円と前年同期(2兆1605億円)に比べ約32%減った。 なかでも海外案件は3月以降、件数減に転じたうえ、金額の張る大型M&Aがほぼ姿を消した。
コロナ禍の世界的拡大の中、M&A市場は国内回帰の様相を帯び、案件の小型化が鮮明になっている。
M&A仲介のストライク(M&A Online)が適時開示情報をもとに経営権の移転を伴うM&A(グループ内の再編は除く)について集計した。
上期は海外案件の落ち込みを国内案件でカバーし、全体として件数増を保った。
全406件を四半期でみると、1~3月が前年同期比10件増の232件、4~6月が同1件増の174件。
このうち海外案件は合計68件で、前年86件を20件近く下回り、単月で6月は9件にとどまり、2018年6月以来2年ぶりに月間1ケタとなった。
海外案件の件数減と並行し、コロナ感染が国内でも深刻化した3月から顕著になったのが案件サイズの小型化。
上期中、取引金額100億円を超える大型案件は19件で、前年同期の30件から3割以上減った。
月別の推移は1月4件、2月8件の後、3月2件、4月1件、5月2件、6月2件。
海外案件の低調が背景にある。
こうした状況を反映し、緊急事態宣言と重なった4~6月の取引金額は3501億円(前年同期は1兆4288億円)と、過去10年間で2013年(3481億円)と並ぶ最低水準に落ち込んだ。
三井E&Sホールディングスが艦船事業を三菱重工業に譲渡する方向で協議入りしたほか、オリンパスはデジタルカメラなどの映像事業を投資ファンドの日本産業パートナーズに年内をめどに売却すると発表した。
金額は計画公表時のもの。
三菱商事、中部電力と共同で蘭エネルギー企業エネコを子会社化
アークランドサカモト、LIXILビバをTOBなどで子会社化
ニチイ学館、米投資ファンドのベインキャピタルと組みMBOで非公開化
前田建設工業、前田道路をTOBで子会社化
総合メディカルホールディングス、投資ファンドのポラリスと組みMBOで非公開化
米ベインキャピタル、三井E&Sホールディングス傘下の昭和飛行機工業をTOBで子会社化
大王製紙、丸紅と共同でブラジルの衛生用品メーカー大手Santherを子会社化
新生銀行、ニュージーランド最大手のノンバンクUDC Financeを子会社化
ノーリツ鋼機、DJ・クラブ機器大手のAlphaTheta(旧パイオニアDJ)を子会社化
豆蔵ホールディングス、投資ファンドのインテグラルと組みMBOで非公開化
オーデリック、MBOで非公開化
グローリー、セルフ注文・決済機器大手の仏アクレレック・グループを子会社化
META Capital、澤田ホールディングスをTOBで子会社化
SBSホールディングス、東芝傘下の東芝ロジスティクスを子会社化
東海カーボン、炭素黒鉛製品メーカーの仏Carbone Savoieを子会社化
ツムラ、漢方製剤用原料の中国「盛実百草」を子会社化
共英製鋼、カナダのMCアルタスチールから電炉事業を取得
タムロン、創業家資産管理会社のニューウェルを子会社化
カルビー、サツマイモ加工卸のポテトかいつかを子会社化
シャープ、NEC傘下のNECディスプレイソリューションズを子会社化
上期、日本企業のM&A意欲は総じて底堅く推移したものの、先行きは不透明感が漂う。
M&Aは通常、取引完了までに半年程度を要するが、コロナ感染の影響下、新規案件の仕込みや着手に遅れが出ていることなどから、秋口にかけて一時的に案件が枯渇するとの見方もある。
トピック:M&A
更新日:2020-09-25